斎宮女御集、万葉集試訳

藤原定家加筆『齋宮女御集』
https://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/waka/saiguunonyougo/saiguusifu02.htm
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#斎宮女御



万葉集試訳

4010 【承前,反歌。】
 宇良故非之 和賀勢能伎美波 奈泥之故我 波奈爾毛我母奈 安佐奈佐奈見牟
 衷戀(うらごひ)し 我(わ)が背君(せのきみ)は 撫子(なでしこ)が 花(はな)に欲得(もがも)な 朝(あさ)な朝(さ)な見(み)む
 由衷發至誠 朝思暮想我兄君 吾人有所念 冀汝可化撫子花 朝朝暮暮翫身畔
大伴池主 4010
 右,大伴宿禰池主報贈和歌。【五月二日。】

「花(はな)に欲得(もがも)な」,承接家持4007「玉に欲得な」之返歌。https://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/waka/manyou/m17.htm#4007
類歌0408。https://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/waka/manyou/m03.htm#0408

4011 思放逸鷹,夢見感悅作歌一首 【并短歌。】
 大王乃 等保能美可度曾 美雪落 越登名爾於敝流 安麻射可流 比奈爾之安禮婆 山高美 河登保之呂思 野乎比呂美 久佐許曾之既吉 安由波之流 奈都能左加利等 之麻都等里 鵜養我登母波 由久加波乃 伎欲吉瀨其等爾 可賀里左之 奈豆左比能保流 露霜乃 安伎爾伊多禮婆 野毛佐波爾 等里須太家里等 麻須良乎能 登母伊射奈比弖 多加波之母 安麻多安禮等母 矢形尾乃 安我大黑爾【大黑者,蒼鷹之名也。】 之良奴里能 鈴登里都氣弖 朝獦爾 伊保都登里多氐 暮獦爾 知登理布美多氐 於敷其等邇 由流須許等奈久 手放毛 乎知母可夜須伎 許禮乎於伎氐 麻多波安里我多之 左奈良敝流 多可波奈家牟等 情爾波 於毛比保許里弖 惠麻比都追 和多流安比太爾 多夫禮多流 之許都於吉奈乃 許等太爾母 吾爾波都氣受 等乃具母利 安米能布流日乎 等我理須等 名乃未乎能里弖 三嶋野乎 曾我比爾見都追 二上 山登妣古要氐 久母我久理 可氣理伊爾伎等 可敝理伎弖 之波夫禮都具禮 呼久餘思乃 曾許爾奈家禮婆 伊敷須敝能 多騰伎乎之良爾 心爾波 火佐倍毛要都追 於母比孤悲 伊伎豆吉安麻利 氣太之久毛 安布許等安里也等 安之比奇能 乎氐母許乃毛爾 等奈美波里 母利敝乎須惠氐 知波夜夫流 神社爾 氐流鏡 之都爾等里蘇倍 己比能美弖 安我麻都等吉爾 乎登賣良我 伊米爾都具良久 奈我古敷流 曾能保追多加波 麻追太要乃 波麻由伎具良之 都奈之等流 比美乃江過弖 多古能之麻 等妣多毛登保里 安之我母乃 須太久舊江爾 乎等都日毛 伎能敷母安里追 知加久安良婆 伊麻布都可太未 等保久安良婆 奈奴可乃乎知波 須疑米也母 伎奈牟和我勢故 禰毛許呂爾 奈孤悲曾余等曾 伊麻爾都氣都流
 大君(おほきみ)の 遠朝廷(とほのみかど)そ 御雪降(みゆきふ)る 越(こし)と名(な)に負(お)へる 天離(あまざか)る 鄙(ひな)にしあれば 山高(やまだか)み 川大(かはとほしろ)し 野(の)を廣(ひろ)み 草(くさ)こそ繁(しげ)き 鮎走(あゆはし)る 夏盛(なつのさか)りと 島鳥(しまつとり) 鵜養(うかひ)が伴(とも)は 行川(ゆくかは)の 清瀨每(きよきせごと)に 篝差(かがりさ)し 漂上(なづさひのぼ)る 露霜(つゆしも)の 秋(あき)に至(いた)れば 野(の)も多(さは)に 鳥集(とりすだ)けりと 大夫(ますらを)の 伴誘(ともいざな)ひて 鷹(たか)はしも 數多在(あまたあ)れども 矢形尾(やかたを)の 我(あ)が大黑(おほぐろ)に【大黑(おほぐろ)とは,蒼鷹(あをたか)が名也(ななり)。】 白塗(しらぬり)の 鈴取付(すずとりつ)けて 朝狩(あさがり)に 五百鳥立(いほつとりた)て 夕狩(ゆふがり)に 千鳥踏立(ちとりふみた)て 追毎(おふごと)に 許事無(ゆるすことな)く 手放(たばな)ちも 復(をち)も隨心(かやすき) 玆(これ)を置(お)きて 亦(また)は有難(ありがた)し 小馴(さなら)へる 鷹(たか)は無(な)けむと 心(こころ)には 思誇(おもひほこ)りて 笑(ゑ)まひつつ 渡(わた)る間(あひだ)に 狂(たぶ)れたる 醜翁(しこつおきな)の 言(こと)だにも 我(われ)には告(つ)げず 殿曇(とのくも)り 雨降(あめのふ)る日(ひ)を 鳥獵(とがり)すと 名(な)のみを告(の)りて 三島野(みしまの)を 背向(そがひ)に見(み)つつ 二上(ふたがみ)の 山飛越(やまとびこ)えて 雲隱(くもがく)り 翔去(かけりい)にきと 歸來(かへりき)て 咳告(しはぶれつ)ぐれ 招由(をくよし)の 其處(そこ)に無(な)ければ 言術(いふすべ)の 方便(たどき)を知(し)らに 心(こころ)には 火(ひ)さへ燃(も)えつつ 思戀(おもひこ)ひ 息衝餘(いきづきあま)り 蓋(けだ)しくも 逢事有(あふことあり)やと 足引(あしひき)の 彼面此面(をてもこのも)に 鳥網張(となみは)り 守部(もりへ)を据(す)ゑて 千早振(ちはやぶ)る 神社(かみのやしろ)に 照鏡(てるかがみ) 倭文(しつ)に取添(とりそ)へ 祈禱(こひの)みて 我(あ)が待時(まつとき)に 娘子等(をとめら)が 夢(いめ)に告(つ)ぐらく 汝(な)が戀(こ)ふる 其秀鷹(そのほつたか)は 松田江(まつだえ)の 濱行暮(はまゆきくら)らし 鯯捕(つなしと)る 冰見江過(ひみのえす)ぎて 多祜島(たこのしま) 飛徘迴(とびたもとほ)り 葦鴨(あしがも)の 集(すだ)く舊江(ふるえ)に 一昨日(をとつひ)も 昨日(きのふ)も在(あり)つ 近(ちか)くあらば 今二日(いまふつか)だみ 遠(とほ)くあらば 七日彼方(なぬかのをち)は 過(す)ぎめやも 來(き)なむ我(わ)が背子(せこ) 懃(ねもころ)に 莫戀(なこ)ひそよとそ 今(いま)に告(つ)げつる
 聖明大君之 遙遙天邊遠朝庭 御雪降紛紛 名負北越越中國 天離日已遠 以此鄙夷偏鄉故 巍峨山高聳 河川雄大浩瀚 原野廣無邊 草木實繁發茂盛 鮎魚蹦躍兮 皎陽似火盛夏時 島嶼禽鳥兮 鵜養伴緒鸕鶿匠 行川逝水之 九江八河清瀨間 燔焚燃篝火 漂泊溯溪登澤上 露霜沁寒兮 蕭瑟秋日至來者 野原荒郊間 群鳥多集聚此地 大夫壯士之 伴緒僚屬率誘來 雖然鷲鷹は等 其數甚多在於茲 然以矢形尾 我之大黑其秀絕【大黑者,蒼鷹之名也。】 銀飾白塗之 鈴鐸取付繫其身 在於朝狩時 驅逐追趕五百鳥 又於夕狩時 蹴散排擊眾千鳥 每逢其追獵 莫有聽遁許逃矣 縱令放手而 必當歸來恣隨心 除此之外者 其亦難得甚珍奇 如斯飼馴之 蒼鷹之疇蓋無他 在吾方寸間 思之可誇傲群人 不覺笑莞爾 怡然自得驕矜間 蓋是顛狂哉 罪該萬死醜翁矣 雖然僅一言 竟然未嘗告於我 殿曇蟠踞而 天降滂沱大雨日 稱將為鳥獵 唯告其名訴誑語 射水三島野 可以背向所望見 盦蓋二上山 飛越其嶺騰其峰 雲隱蔽其姿 翔去不再復返矣 如是歸來而 漠然咳告放逸事 雖然舉手招 無奈其處無效驗 雖欲喚其皈 不知言術方便矣 於吾胸懷間 怒火中燒燃憤矣 思慕不能止 唏噓悲嘆渡終日 心中有所念 或許蓋有逢事哉 足曳勢險峻 高山彼面與此面 張羅捕鷹網 配置戍人据守部 千早振稜威 誠心參拜嚴神社 執無曇照鏡 添以倭文和妙織 恭奉祈禱而 吾人引領待時頃 見得娘子等 顯現夢告宣如是 汝命之所戀 天下秀絕蒼鷹者 今在松田江 行暮其濱飛翱翔 或捕獵鯯魚 過於湊川冰見江 更在多祜島 飛巡徘迴繞不止 葦鴨所群聚 騷鳴喧囂舊江上 無論一昨日 抑或昨日皆在彼 吾論其近者 今日以降復二日 縱令茲遠者 今日以降七日後 蓋不過其時 必當歸來還此地 吾兄莫殷勤 無須甚戀心苦也 於今告我在夢中
大伴家持 4011

「大君(おほきみ)の 遠朝廷(とほのみかど)そ」,此前省略主語越中國。至於第六句乃並立之述語。
「山高(やまだか)み 川大(かはとほしろ)し」,以下為形容越中國貌之並立述語,「大(とほしろ)し」為雄大之狀。此二句借用於山部赤人0324之曲。https://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/waka/manyou/m03.htm#0324
「鮎走(あゆはし)る」,「走(はし)る」乃活潑跳躍之狀。
「夏盛(なつのさか)りと」,「と」為「である」之意。
「島鳥(しまつとり)」,「鵜(う)」之枕詞。
「鵜養(うかひ)が伴(とも)は」,驅使鵜鳥捕魚維生者。當時不若現在,不乘夜舟,左手持篝火,右手執鵜。
「篝差(かがりさ)し」,「篝(かがり)」為用以焚燒篝火之鐵籠,或指稱篝火自身。
「漂上(なづさひのぼ)る」,將下半身沉在水中步行,以利鵜鳥捕魚。
「露霜(つゆしも)の」,「秋(あき)」之枕詞。露霜為露之雅語。
「秋(あき)に至(いた)れば」,「至(いた)」為到了這個時期。
「野(の)も多(さは)に 鳥集(とりすだ)けりと」,「集(すだ)け」為聚集之意,亦有喧囂之意涵。此二句為家持之語。
「大夫(ますらを)の伴(とも)」,此云越中國廳配下之官人。
「矢形尾(やかたを)」,形如矢形之鷹尾。
「蒼鷹(あをたか)」,三歲雌鷹之號。按『和名抄』,一歲稱「黃鷹(わかたか)」,二歲稱「撫鷹(かたかへり)」,三歲稱「青鷹(おほたか)」,而三歲雄鷹稱「兄鷹(せう)」。雌鷹體型碩大,適於鷹獵。
「白塗(しらぬり)の 鈴取付(すずとりつ)けて」,繫上鍍銀之鈴。鷹獵時藉此以之其位置。
「千鳥踏立(ちとりふみた)て」,踏入草叢中,驚動以令匿身其間之鳥、兔等獵物飛散。
「手放(たばな)ちも」,放手。
「復(をち)」,此云鷹回到自己手邊。
「隨心(かやすき)」,如意。
「有難(ありがた)し」,難得。
「思誇(おもひほこ)り」,得意之狀。
「狂(たぶ)れたる」,精神異常,此乃憎恨愚行之狀。
「醜翁(しこつおきな)の」,咒罵憎惡對象之語。
「言(こと)だにも」,連稍微知會都沒有。
「殿曇(とのくも)り」,「殿(との)」與「棚(たな)」同源。
「名(な)のみを告(の)りて」,未詳其受詞。蓋為家持以外之門衛。
「三島野(みしまの)を」,此句至「翔去(かけりい)にき」為山田君麻呂之報告。
「咳(しはぶ)れ」,未詳。估作咳解。
「招由(をくよし)の」,「招(をく)」為招來。「由(よし)」為方法。
「息衝餘(いきづきあま)り」,幾度嘆息皆無法平復。
「蓋(けだ)しくも」,或許。
「彼面此面(をてもこのも)に」,山中四處。
「鳥網張(となみは)り」,「鳥網(となみ)」為捕鷹網。
「守部(もりへ)を据(す)ゑて」,「守部」乃守在鷹網旁之戍人。
「倭文(しつ)」,日本古來模樣之編織。此云貢獻給神之奉獻品。
「娘子等(をとめら)が」,神靈多借女性或幼童之形姿託宣。等非複數之意。
「秀鷹(ほつたか)」,優秀之鷹。
「飛徘迴(とびたもとほ)り」,在同處徘徊繚繞。
「近(ちか)くあらば」,少則。此處之遠近表時間。
「今二日(いまふつか)だみ」,再過兩天「今(いま)」為「再」之意。
「懃(ねもころ)」,誠心、熱情地。
「今(いま)に告(つ)げつる」,「今(いま)」或為「夢(いめ)」之轉換。反歌亦有「夢に告げつも」云云。

4012 【承前,反歌其一。】
 矢形尾能 多加乎手爾須惠 美之麻野爾 可良奴日麻禰久 都奇曾倍爾家流
 矢形尾(やかたを)の 鷹(たか)を手(て)に据(す)ゑ 三島野(みしまの)に 狩(か)らぬ日數多(ひまね)く 月(つき)そ經(へ)にける
 嗚呼矢形尾 放逸秀絕蒼鷹矣 射水三島野 不得据手為鷹狩 其日數多已歷月
大伴家持 4012

「鷹(たか)を手(て)に据(す)ゑ」,將獵鷹安置手上以為獵。
「狩(か)らぬ日數多(ひまね)く」,因為蒼鷹散逸,不得鷹獵之日多。而左注九月廿六日者,不合鷹獵之時節。或云其鷹走失或過半年。