古書校訂の話

『日本陰陽道史総説』所収『占事略决』の校訂文について (Cask Strengthより)
http://d.hatena.ne.jp/consigliere/20050406#1112748611
色々勉強になりました、昔「常以月将加占特」という間違った指摘を見た時、私も慌てて所持の『日本陰陽道史総説』をチェックしました。結局、所持本(第八刷)は「常以月将加占時」と書きます。consigliereさんの第六刷も「常以月将加占時」から察すると、少なくとも第六刷、あるいはそれ以前、この所の誤字・誤植を訂正したのです。
でも、私が『占事略决』を電子テキスト化の頃、以前が読んだ『五行大義』『春秋繁露』、そして『奇門遁甲』の奇門諸神などを比較すると、『日本陰陽道史総説』所収『占事略决』はまだ間違った処があると思います。その処はテキスト化の頃のミスなのが、安倍泰統が抄録の頃のミスなのが、原本を読まないと判断できません。どころで、普通のルートで見られる原本写真は、京都府立総合資料館蔵『占事略决』の五行王相死囚老法のページと京大藏本『占事略决』しかありません。安倍泰統抄本の原本(尊経閣文庫所蔵)について、私も一度も観た事がないのです。



また、岩波文庫『上宮聖徳法王帝説』(第三刷)・付正誤表((Cask Strengthより)
http://d.hatena.ne.jp/consigliere/20050402
付正誤表どうも有り難う御座います。
私は未だ古代史獺祭にある『上宮聖紱法王帝説』原文テキストしか観た事がありませんけど。また、『日本書紀』以外、『日本霊異記』上巻第四と『伊豆国風土記逸文』『伊予国風土記逸文』にも聖徳太子の話があります。




おまけに、『占事略决』と『占事略決』の話ですが、中国では「决」を「決」の異體字に観られます。

王初慶考:


「决」為「決」之異體。「決」,《説文.水部》云:「決,行流也,從水從夬。盧江有決水,出於大別山。」隸變作「決」,隸定作「決」。《隸辨.入聲.屑韻》引〈周憬功勳銘〉「禹不决江踈河」作「决」,下云:「按:碑變氵從冫,今俗因之。」《干祿字書.入聲》曰:「决、決:上俗下正。」《玉篇.氵部》亦謂:「决,古穴切,俗決字。」謹按:凡從「决」之字,以筆勢之小異,亦或作「决」,故「决」為「決」之異體字無疑。

異體字字典より

ちなみに、始めは「決」が「水流」の意味だった、そのあと「判断」の意味が生まれました。


あと、『字彙』には以下の説明があります。

決、流也、断也、判也、破也。

『字彙』より


『集韻』には占い(巫噬)との関係も示しています。

決、噬也。

『集韻』より

ですから、「决」と「決」の意味では多分同じだと思います。「决」は書写上の便利の為の異字と考えられます。





追記:北斗柄さんから以下の情報を頂きました。

前田尊経閣文庫は現在、(財)前田育徳会の管理下にありますから、前田育徳会に問い合わせてマイクロフィルムからの紙焼きを取り寄せることができます。

どうも有り難う御座います。m(__)m