『前賢故實』巻五完成

■『前賢故實』巻五完成
http://miko.org/~uraki/kuon/furu/chara/senken/senkenkojitu.htm
宇多朝から一條朝まで。
詩文の数も多くなりまして、力不足で追いつかない状態に近いです。
やたがらすナビの中川さんなしに、和歌の変体かなを認識することもできませんでした。

これで、前賢故實の更新を一旦中止して、
本朝文粹、扶桑略記などの電子テキスト化でいこうと思います。
のち前賢故實の更新再開の際を備えて、引用されそうの漢詩文らを先にテキスト化したいと思います。



■「一途な彼女」だと思われる行動傾向7パターン
http://girl.sugoren.com/report/post_714.php
やや一昔前の記事なのですが、以前mixiで話して未完のままに放置したことがあります。

手元にないゆえ確認できませんが、
確かに『女たちの大和』には、辺見じゅんの元で、
「私をあの人の眠る場所へ連れていてください。」
と、五十年も凌ぐ亡き夫への思いでを抱いた女性の話がありましたね。

今度、貸した本を返却してくれる際、確認したいところです。

  • 第一話       われ亡くも、母よ微笑め
  • 第二話       軍神の柿
  • 第三話       遅れてきた遺書
  • 第四話       恋文
  • 第五話       軍夫の弔い
  • 第六話       シベリアの菊
  • 第七話       歳月
  • 第八話       終わりなき旅
  • 第九話       大和の墓標
  • 第十話       約束
  • あとがきに代えて
  • 解説        保阪正康

そう、「一途な女性」について、かなり印象を強く持ったのは『女たちの大和』に話した、小笠原嘉明の妻・小笠原愛子でした。
辺見じゅん角川春樹を説得して「海の墓標委員会」を建てて、大和の海底探索を行う頃の話でした。
一人の女性、小笠原愛子が、いきなり電話を入れたといいます。

私を東シナ海へ連れて行って下さい。主人に会わしてて下さい。

私を東シナ海へ連れて行ってくれませんか。お金は幾らでも出しますので、お願いします。

私はまた、死んだあの人に会える。

「愛子は戦死した夫を、「嘉明」と呼ぶ。「主人」とか、「あなた」と呼びかけるには、時間が足り無すぎた。二人が一緒に過ごした新婚生活は、合わせて三ヶ月に満たなかったのだから。」といいます。
ここで小笠原嘉明の遺書も併記致します。

御両親様に:


 我れ、軍人としての本分を立派に果し、神風大和艦上に最期を飾るは、我れ無上の誉と深く心に銘記し、笑つて死するものなり。
 御両親様、妻愛子は良き嫁になかりしが我の妻で御座居ます。夫婦の契を立て、二世を誓し以上は我と一心同体なりし事は申す迄もないと存じますし、ましてや我は国難に殉じる軍人です。其の家族が軍人の家族らしからぬ事、此の世に多しと承り此に一言遺書を記すものなり。

  • 一、夫に死別れし妻の惨めな姿は最悪の姿と存じます。誰を頼りに何を望て生きて行くであるか、人生望無しでは生き難しと存じます。国難に殉じる軍人の妻が惨めな姿をさらして良いでしょうか。愛子は我家の一員です。我なき後も希望に満ちて生きる様、御両親様にて御励し下さる様御願ひ申し上げます。
  • 二、里方へ帰るも可なれど里方にては御迷惑せられますれば、我家にいては居辛く本人としては我家を出て静かに自活したを希望なれば、本人の希望通りに自力自活の道に進む様御世話御願ひ申し上げます。其の上にて再婚の道有ればお勧め下さい。再婚致す迄は愛子の籍は我が妻として置いて戴きたく御願ひ申し上げます。
  • 三、人間は感情の動物なれば憎きやつと思はばだんだんと遠ざかり、可愛がれば愛子とても孝養せなくてはならなくなると我れは存じますれば、嫁と思はず我子と思はれまして可愛がつて下さいます様御願ひ申し上げます

(中略)

 我国難に殉ずることあるも徒らに狼狽することなく平素教へたる所に従ひ泣く勿れ。と申しても無理。泣きたくば泪が枯るる迄泣け。泪枯るれば元気に働き自活の道を知れ。働けば悲しさも淋しさも忘れる事出来るなり。
 我生前は我家に対しては献身的苦労を致したとは言難し。我に対しては短ぎ縁なれど献身的苦労を致し、善く尽し我に幸福を与へ良く慰め励しくれし事厚く礼を申すが、子は親に三つの大恩有り。此の世に出生せし恩、教育の恩、今日迄育ての恩。我の親は愛子の親なり。我れ此の大恩を御返しせずに行くなれば、我なき後は我れの分と共に良く親に従ひ、孝養を尽す事願ふ。
 然れども我なぎ後は我に少しばかりの義理立てを致し、あたら幸福を逃す勿れ。再婚の道あらば再婚するも可、我家を守りて親に従ふも可。『(戒)自活の道を開くは良しなれど、女子、男子を知りたる者、貞操を守り難し。男子、女子を知りたる者、貞操守り難しと申すゆゑ、不義にて家名を汚すなれば、誰に遠慮する事なく再婚すべし。』子孫有りても我が父母に委託し再婚すべし。我国民幸福の為に殉ずるものなれば、愛子再び幸福となれば此れ又我の喜びなり。

(中略)

 今や一億打ちて一丸となり、火玉となりて国難にあたる時なり。特攻隊空挺隊は一億国民の幸福の為に、お前達の為にたふとぎ血潮とで守られてゐる事、夢夢(ママ)は忘るる勿れ。
 以上述べたる所なりしが夫として只一つ残念なるは健全なる血統を残さざる事なりしか。我が肉体はたとえ南海の藻屑と消えても、我が精神は永遠にお前の血潮に生るものなりと深く心に銘記せよ。

昭和二十年一月

     愛子へ

海軍上等工作兵曹 小笠原嘉明

以上引用、『女たちの大和』大和の墓標より


和漢朗詠集
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/872750/13
http://www.j-texts.com/chuko/wakanroah.html