やまむらはじめ『天にひびき』

やまむらはじめ『天にひびき』

天にひびき 1巻 (ヤングキングコミックス)

天にひびき 1巻 (ヤングキングコミックス)

面白かった。
やまむらならでは、音を出せない漫画より音楽の感動を見事に表現しました。


トミノ悲劇的な『龍哭譚紀行』、喪失感とすれ違いを仄めかす『未来のゆくえ』、
退廃にして人間的『境界戦線』、それぞれの夢を描く『夢のアトサキ』、
理想を追いかくSF『エンブリヲン・ロード』、それと双生児が如く『蒼のサンクトゥス』、
そして壮大なる神話ファンタジーカムナガラ』やそれを別方向で示す『神様ドォルズ』。


やまむらはじめ氏の漫画にはいつも何かかの力が込めており、
感動を描く出す才能があります。


『天にひびき』は一見普通に見えますが、
読みながら氏のテンポに乗せられ、まるで作中ひびきの指揮に魅せられる楽屋たちのように。
そういう作者とキャラとの同一性が、作品をある高みへ導くに違いないと思います。
ゆえに、シリーズ買い確定。



余談ですが、やまむら氏のヒロインが気に入るこが結構多いです。
それは『カムナガラ』のツクミ、『夢のアトサキ』』の阿耶を筆頭にして、
エンブリヲン・ロード』のルキオラやアスタルテ、『蒼のサンクトゥス』には月夜野日奈、
境界戦線』(のWatch Dog)の旧条約派の女性などなどは、個人的魅力的に見えます。


神様ドォルズ』の詩緒と日々乃は...まぁ、今のところでは靄子株の方が高いだったりします。
『天にひびき』のひびきはインパクトある配置ですが、好みとは程遠いから波多野深香に期待。

あとちなみに、やまむら作品とは全然関係ありませんが、
以上を見て浦木がまた黒髪ロング贔屓していると言い出そうな、そこのキミ!、
夏のあらし』においで嵐山小夜子より断固たるカヤ・バーグマンを応援していきたいと思います。



富野由悠季『タンエーの癒し』

ターンエーの癒し

ターンエーの癒し

角川春樹事務所刊。良くも悪くも(サンライズなどへの)悪口がおおい。最近のトミノと比べたらやや懐かしい雰囲気になります。

五年ほど前に、自殺したかもしれない僕を救ってくれたのである。

確かに、物語的はアニメ版よりも小説版の方が私の好みに合いますが、癒しとしての役割は断じてアニメの方が上でしょう。
このお陰で、最近のトミノはかなり前向になったようで、ウツ病から全快して再出発を期待いたします。
ちなみに文末には司馬遼太郎の引用があります。

司馬遼太郎が同書(オランダ紀行)でしるしている一語は、決定的に未来を指し示している


──未来は確固とした現実のなかにある──

この言葉をみてドキッとしない人々が、国家を語り未来を夢想するのなら、やめていただきたい。

まさに三島が絵空事の未来が嫌いで、明日は確固とした今の延続にあると主張するところと一致しています。



クトゥルー (5)

クトゥルー〈5〉 (暗黒神話大系シリーズ)

クトゥルー〈5〉 (暗黒神話大系シリーズ)

五冊目。
ラブクラフト&ダーレスの「ピーバディ家の遺産」ちょっと「丘の夜鶯」と似ている。悪くないが、もっといい作品になれるような気がします。
F・B・ロングの「ティンダロスの猟犬」は満足じゃないがやや面白い。鋭い角度を消すにより猟犬の到来を防けるとは素敵な発想でした。
R・E・ハワードの「墓はいらない」、悪くないが普通でした。
ヒュー・B・ケイブの「臨終看護」はちょっと面白かった。正気で頭脳明晰なピーターが一転してナイアーラトテップの信者になる処が鬼気めいた。
ロバート・ブロックの「闇の魔神」と「無貌の神」、ともに面白いが、個人的は「無貌の神」がかなり気に入ります。
ダーレスの「戸口の彼方」...はい、ダーレスダーレス飽きた。(酷い)「谷間の家」は悪くありませんが、納得いかない処が沢山あります。
C・A・スミスの「魔道士エイボン」、伝説の魔法書の著者・エイボンの話だ!と興奮してしまったら...やや滑稽な一篇でガッカリしました。エイボンの書の雰囲気をぶっ壊すじゃないかと。まるで『花ざかりの森・憂国』で「卵」をみた雰囲気でした...原題は「Door to Saturn」ですから仕方ありませんが...とはいえ、それなり面白いから赦してあげます。「マタマウスの遺言」は面白かった。一見関係ないかもしれませんが家系図を見たらクニガティンがツァトゥグアの子孫で、復活する度に人間の特徴がなくなりアザトースに近くなる設定が見事でして、「魔道士エイボン」とともに如何にもツァトゥグアの伝説に力を注ぐ意気が見受けられます。なお、ラブクラフトによる家系図ではC・A・スミスがツァトゥグアの末裔だったりします。


やまむらはじめ神様ドォルズ 6』

神様ドォルズ 6 (サンデーGXコミックス)

神様ドォルズ 6 (サンデーGXコミックス)

まひる大暴れ、久羽子大活躍、日々乃が大ピンチ。危なく犯されるところで止めたのはせめての救いでした。
言われてみれば、『カムナガラ0』もこういう危ない局面を避けましたのですね。
やまむら氏がまぐわうの場面を避忌しないものの、合意以外を触れんとするのように思えます。
できればこの調子を続けて欲しいところです。やまむらヒロインが結構気に入る人が多いからそんなの耐えられません。