マキナ

新撰姓氏録
http://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/mokuroku/syoujiroku/syoujiroku.htm
諸蕃完成。未定雑姓更新中。



Dies irae~Acta est Fabula~ メモ

「1939年、12月24日......」
「カール・クラフトとラインハルト・ハイドリヒの下、今の黒円卓が生まれたのはその時だ」
黎明の刻(モルゲンデンメルング)......第二の大戦が幕を開け、世界が狂騒の坩堝と化していた頃の事だとマキナは言う。
「もっとも早く、奴ら二人に降ったのはベイとシュライバー。それに若干遅れる形で、ザミエル、マレウス、クリストフ......バビロン、そしてヴァルキュリア
「初期は九人。残りは四人だ。」
「シュピーネは、収容所の慰問官として髑髏師団(トーテンコープ)のアイケに通じていたクリストフが招きよせ──」
「トバルカインは、ハウスホーファーの命を逆手に」取ったザミエルが、日本より呼び寄せた」
「残るは二人──」
「だがゾーネンキントは、既にその時点から予約席だ」
「完全な空席。候補もなく予定もなく、何者が入るかも判らぬ席が、たった一つだけ残された」
「それはどのように埋めたと思う?」
幕引きのご都合主義(デウス・エクス・マキナ)...それはどんな物であろうと問答無用。例え一瞬でも歴史はある存在、事象、概念残らず、強制的に物語の幕を引くこと。
「ここは毒壷」
「最後の一人になるまで強要された、奴隷たちの墓場」
「誉れの欠片も存在しない、腐りきったのヴァルハラだ」
それは蠱毒......最後に残った一匹すらも結局殺され、呪詛の道具にされるだけの外道業を、よりにもよって人間を使い?
「副首領(やつ)の十八番だ。いないのならば創ればいい」
黒円卓に残った最後の空席。それを埋める為だけに。
「第七位.(ズィーベン).....十三(ドライツェーン)の中央、そして天秤(ヴァーゲ)だ。筋書き(ものがたり)を左右する者、なんとなれば終らせる事さえ出来る者」
「そうして渇望は利用される。今のお前のように、誰もが思ったことだそう」
「もう嫌だ。やめてくれ。早くこんな事は終らせてくれ」
「千人が、万人が、全く同じ想いを懐いて殺し合う。国の栄華も、家族の無事も、友や女の幸せも......依るべき大儀も何もない。納得の出来ぬ死に場所に、ヴァルハラなど降りてこない。」
「真実戦場で終れたのだと確信出来れば、未だしも幸せだろう。だがここは何だ?」
名誉なき、意味無くただの愁嘆場。戦士の最後に飾るにしては、あまりも侮辱している共食いの箱庭だ。
「そうして血が、魂が、何万も集まり練成される。”核”はさらに分けられて、依代となる物に込められる」
「俺は、とある鋼鉄の中に──」
「そしてお前は──」
暗い瞳が俺を射抜く。同情と、憐憫と、ある種確実な親愛の情。そして拭い去れぬ悲憤を込めて。
「カール・クラフトの血が満ちたフラスコの中だ」
「──」
その言葉は、物理的な衝撃すら伴って俺の胸を貫いた。
「俺はお前の当て馬だよ、兄弟」
蠱毒の儀式は、未だ最後の共食いが残っていると。
通常、毒壷の戦いが終った時点で、残った一匹が呪詛媒体に使用される。
だが、さらにそれを二つに分けて、もう一戦。
もとはまったく同じだったものを相争わせ、真実完全な最強を決める。
「お前が俺に勝てたなら、ハイドリヒの餌として相応しい」
「だが、俺が勝てばどうなる?」
鉄拳を握り締め、空を殴り砕くようにしながら名も無い黒騎士は咆哮した。
「俺はその時こそ、本当に死ねる!この毒壷を終りに出来る!」
「馬鹿な......!」
誰がそんな約束したのか知らないが、一体何を根拠に信じている。何処にもそんな保障はないだろう。
「どうでもいい。俺はただ一刻も早く終りたいだけだ」
地響きを起こすような歩みと共に、人形(マキナ)が俺の方へとやってくる。
この、既に身動きすら出来ず、幕引きを待つだけの俺に止めを──
「あるいは、お前が勝っても結果は同じかもしれんがな。だがハイドリヒを斃さぬ限り、俺は永遠に解放されない。」
「クラフトの口約束など、信じるに値せぬ。ああ確かにそうだろう。だが俺は毒壷(ここ)出る為に、やれる事は他に無い」
「他力など当てにせん。二度と蘇りたいとも思わない。であれば、この戦いを最後に幕を引くと、強く渇望するだけだろう」
「俺が本当に解放されるか、お前を殺してみなければ判らんが......」
「少なくとも、お前がハイドリヒを斃すよりは、確率的に有り得よう」
「そしてそれ以上に──」
「染み付いた習性は拭い去れん。毒壷(ここ)にいる者は誰であれ殺したくなる」

「俺と別れたお前の祈りを示してみろッ!俺と同じではないと知っている」
俺の渇望、俺のルール、俺の求め願う世界。
確かに違う。共に一撃死の牙を持つが、俺のは奴ほど徹底していない。
終りではなく、停止だ。その意味するところは......
「それとも、クラフトの渇望に毒されたか?」

「今この時は負けてやれ。勝ったと劣等どもに思わせろ。」
「その為に仲間を殺せ。所詮敵など、幾百万殺しても程度が知れる。」
「これは質の問題だ。守るべき民、愛すべき友、贄として彼らに勝る物はない。容易に奪えぬ命だからこそ、捧げるべき価値がある。」
「殺すがいい。愛を持って絶滅させろ。」
「帝都に属する諸々残さず、生贄の祭壇に捧げて火を放て。」

人界(ミズカルズ)に語り継かれる英雄談(ヴォルスング・サガ)──定命の者として生きるからこそ輝き栄える物語。それは即ち、絶対の死という終幕(マキナ)を是とする事だ。
死を求め、望み、希い、何者であれその幕引きを免れない終りの創造。
今やこいつ、それ自体が意志を持ったご都合主義(デウス・エクス・マキナ)。触れるもの悉くを終了させる神のゴンドラと化している。
「戦いは嫌いか?」
「殺し合いを愉しんだ事など、一度も無い。」
「戦場を誉れとし、漢の本懐としてはいても、血に愉悦する獣性など持ち合わせん。お前もそうだろう、兄弟。」
「決着は早ければ早いほどいい。兵(つわもの)同士であればあるほど、そこに不純物は混ざらんものだ。」
「愉悦も、苦悩も、絶望も。」
「焦りも、怒りも、興奮も。」
「皆、須らく不要であるべし。俺とお前の戦いに、そんなものが入り込む余地などない。」
限りなく透明で、純粋で、刹那に激突し弾ける戦意。ただそれのみがあればいい。その果てに降りてくものこそ新のヴァルハラ。
長引けば名勝負とも限らない。むしろそれが、泥仕合とでも言うべきだろう。
その一点においてのみ、俺たちの意見は合知していた。
今から双方激突し、どしらかが斃れどちらかが生き残る。これはそういう戦いなのだと。

「勝利万歳(ジーク・ハイル)!」
人として男として、この上も無い理想的な戦士の体躯。初見で男神像を連想したのは、思えば当たり前の事だった。
こいつは人形。創造物。機械仕掛けの神の像。

いと高き救いの奇蹟よ(Höchsten Heiles Wunder:)──我が救済者に祝福を(Erlösung dem Erlöser)!

■読了拾遺

その生物は目の覚めるような赤い巨大な蟹めいたもので、多くの脚と、背の中央に蝙蝠のような大きな翼を二枚備えている。
(中略)
問題の生物はほかの惑星からやってきたのであって、星間宇宙で生きる事ができ、不恰好ながらもエーテルに抵抗できる力強い翼で飛行できますが、その翼は地球上でたいして役に立つものではありません。

ラブクラフト「闇に囁くもの」クトゥルー〈9〉

まぁ、エーテルは否定されたのですが、宇宙では効率的ですが地球上で制約されるなんて、ようするイオンエンジンですね、わかります(違)。
どころで、具体な出処が忘れましたのですが、クトゥルーの中の一篇では「月の女神・ディアナ」とか書いたような気がします。
調べてみれば元ネタは「ディアナ・・・ローマの月の女神。」でした。
富野監督『ターンAの癒し』では、「ディアナという素敵な名前を考え出した人は今になってもうスタッフに去った。」とか言いましたのですが、ディアナの考案はやっぱりローマの神話から来たのでしょうか。



■少女数素
丁度『少女数素』のあんずちゃんは誰に似てるかと思ったらタコルカだった。
Ph'nglui mglw'nafh Cthulhu R'lyeh wgah'nagl fhtagn!