共同幻想論

共同幻想論

改訂新版 共同幻想論 (角川ソフィア文庫)

改訂新版 共同幻想論 (角川ソフィア文庫)

読了。ありとあらゆる事項、問題を個人幻想・対幻想・共同幻想に区分し論ずることは、なかなか興味深い切り口です。
ですが、国も、民俗も、神話も、「実体を持てず、歴史の出来事の隠喩でもない、幻想・夢に過ぎない」というのは、些か夢のない考え方ですね。
それはともかく、一番疑問を持っているのは、
成るほど、違う分野でも幻想論においで共通の部分があり、幻想としての側面で論じられる事は理解してますが、
それは心理(もしく文化・民俗...等等)学の問題ではない、幻想の問題だ、と言い切ると、それはそれで落とし穴があるのでは?
また、巫女論においで、
女性という性的性質によって、巫(かんなぎ)という自我幻想と共同幻想の介在と違って、対幻想と共同幻想の介在となりのも、
なんか微妙な気がします。対幻想の話ですから、たとえ男巫だとしても、女性に対して対幻想に成りうるはずだと思います。
つまり、そういう両方向性こそ対幻想の仕組みなのだと思います。作者は自分が男性だから女性を対幻想の象徴を拘り過ぎるのでは、と思います。
私的は、個別な分野はそれぞれ分野が用いられるアプローチがあります、幻想論の側面を一緒に考えたらもっと完璧になるはずだと思います。
ですから、読んで損にならないでしょう。でも、幻想論だけで全てを解決できる事にはならないと思います。