伊勢神宮の謎

伊勢神宮の謎、読了

BOOKOFFでついてに買ったものでして、珍作でした。
作者は別に神道か日本文化が詳しいというわけでもなく、専門は近代史という微妙な立場にあります。伊勢神宮を論ずるに始から「森有礼暗殺と伊勢神宮」と取り上げる感性は流石にずれてます。(爆)内宮・外宮の争いに『神道五部書』の「豊受皇太神宮御鎮坐本紀」を取り上げるところ、「正直な所を告白しておかねばならない、一度も読んだ事はありません。」との脱力ぶりも。
森有礼暗殺を続いて、文明開化に怯えた伊勢神宮、内・外宮の争い、遊女の話...作者は左ではないかと疑いたくなります。ですが、そういう事でもなさそうです。ただ、神道・古史に馴染んでないだけあって、我々にとって当たり前のことを奇妙に見えて、私たちが気づかなかったことを取り上げることにしたのだと思います。お蔭様で、普段見られる伊勢神宮関連書物とは一味も二味も違う本書が出来てしまいました。
内外宮の争いは普通に面白い議題でして、別に本書だけで見られるわけではありません。その争いから参拝の順番、遊女町で金を使いつき内宮を参拝しないまま帰った人の続出が、内宮の経済面の危機に繋がったことは流石に面白かった。神宮近郊の遊女町については、中山太郎の『日本巫女史』『売笑三千年史』でも論じたものの、外宮参拝が済ましたら一安心して遊女町で遊び、そのまま金を使いすぎて、「帰る旅費も危ない...まぁ遠いほうの内宮はいいや!」という事は知りませんでした。そもそも、ある程度日本神話も馴染むものとして、内宮をほっとして外宮だけ参拝するという発想はありませんでした。ですが、天照大神豊受大神ほどの差を、体感できない人が昔から大勢存在していたようです。
そして、戦乱により中止した遷宮を再開したのは尼寺だったとも、寡学ながら知りませんでした。僧侶参拝の話に、大仏を修造するには鍍金用の水銀が伊勢産だから、そのために造營に任せた僧が伊勢参拝を行ったことも些か新鮮でした。伊勢参りツアーのガイドとして御師の話も、あんまり知りませんでした。水戸光圀が「けしからん」と半ば商人商売をしている御師を罵した思想は、私の中にも明治以来の神道関係者の中にもあるという訳です。志摩国がなぜ、伊勢国志摩郡ではなかったのか、という話もなかなか面白いです。
大雑把で粗筋を載せると、本書のアウトラインは「内宮・外宮」「式年遷宮」「それぞれの唯一神明造〜内削りと外削り」「僧侶参拝」「斎宮」「伊勢参り御師」「伊勢型紙」「海女伝説」「波切騒動」「平氏と九鬼水軍」となります。その中には「伊勢型紙」「波切騒動」「平氏と九鬼水軍」は神宮とあまりにも無関係にも拘らず大ボリュームで収録するセンスが微妙でした。最終章の「九鬼水軍」を読み終わったら、さぁ、どう纏めてくれるかなと思ったら、全然纏めてないことになりました。伊勢神宮の写真を張って「老若を問わず、今なお日本人の心に訴えかける伊勢神宮」との説明文で終わり、続いたのは千字書評を求めた原稿用紙...トホホ。
まぁ、トホホな所も多く見受けられる本書ですが、それゆえ本書しか伺えない伊勢の一面が読めるから機会があったら読んでもいいかもしれません。




■メモ:WW2前後の書信など
http://catalog.digitalarchives.tw/dacs5/System/Search/Search.jsp?QS=%A4%E9%AAv%AE%C9%A5N
http://catalog.digitalarchives.tw/?URN=1515901
http://catalog.digitalarchives.tw/?URN=1516144


■地球外知的生命体らしき存在からの信号を確認 / ラグバー博士「未知の文明からの可能性が高い」
http://rocketnews24.com/?p=52546
http://ichisureichi.blog67.fc2.com/blog-entry-2217.html


■「新マンガ日本史」仁徳天皇
http://blog.livedoor.jp/kusitama/archives/51873643.html


■留学生のイラスト
http://d.hatena.ne.jp/QianChong/20101029

中国人留学生が学ぶ日本語科はこことのところアニメ系というかオタク系というか、こういうイラストばっかり。もちろんパソコンで、自分で描いているんだとか。いやあ、留学生も様変わりしました。“動漫”方面の趣味の濃さでは、すでに日本人学生を大きく上回っています。

情けない。