最近の読了、万葉集試訳

■最近の読了

  • 星野之宣『コドク・エクスペリメント(蠱毒実験)』
    • SF Action映画の場面を意識した繪つくり、生物兵器という化け物の異種バイオレンスバトルと人間のサバイバル、意外の結末は『2001夜物語』からなる万物生存意識に対して前向きな流れであろう。
  • 野火ノビタ(榎本ナリコ)『ハルオ サクラダファミリア』
    • 野火ノビタ名義だからBL...というわけでもなさそうだな。ある意味『ホーム・ドラマ』に似た一品。
  • 荒木宰『大日本サムライガール 新党』02
    • ブコメだな、これは。惡くないけど、普通。
  • 石据カチル『空挺懐古都市』02
    • 一番気持ちを依存する大切な人から忘れるという「古妖精病」。愛する人への記憶を喪失したくなければこの都市で人と関わり過ぎない、本気にしてはいけないという二律背反を扱う作品。絵が綺麗で切ない話には大いにつぼ。
  • さえきまな『奈良のお宿の春日さん』
    • 小春日和の奈良Guest House物語。モデルはウガヤGuest House。奈良の穴場情報も。
  • 榎本ナリコ『スカート』
    • Advertising sloganは「僕は、スカートを履きたい...。」2002年当たりの作品,既定関連・性別同一性をベースに,男になりきれない男、女になり切れない女、その不自由を感じたことない男のトライアングル(?)恋愛をも一時期書かれて、またそれを性別の枷から脱却するEnding。榎本節は相変わらず素晴らしい。
  • くずしろ『姫の為なら死ねる』
  • 榎本ナリコ「Iron Maiden(鉄の処女)」(Manga Erotics Vol.2 オトナのためのエロティック・コミック刊)
    • 何となく榎本ナリコ「逢魔ヶ時の少年売春」(雑誌「ほんえろ」刊)と比較したくなる。形而上なる「逢魔ヶ時」に比べると「Iron Maiden」は些か直球的なエロいシーンが多数。(Eroticsの編集方針かも)同窓に犯されて以來心を閉じ込め、棘を持つ形具に化して、二度と男を受け入れず。学生相手にいかがわしい行為に走っても(鉄処女の)体内には入れず、ただただ少年が男になって形具になった己の体を捌き開けるのを待ちずつ。その先に何かあるのは知る由も無し。


万葉集試訳

0662 市原王歌一首
 網兒之山 五百重隱有 佐堤乃埼 左手繩師子之 夢二四所見
 網兒山(あごのやま) 五百重隱(いほへかく)せる 佐堤崎(さてのさき) さて延(は)へし兒(こ)が 夢(いめ)にし見(み)ゆる
 英虞網兒山 青垣隱兮五百重 坂手佐堤崎 如是繫心牽魂兒 夜夜縈夢現邯鄲
市原王 0662

「網兒山(あごのやま)」,今三重縣志摩郡阿兒(あご)町英虞(あご)之山。然英虞灣周邊並吾高山,或為同町鵜方以西之膻山。
「佐堤崎(さてのさき)」,蓋為鳥羽港內坂手島。「五百重隱せる 佐堤崎」乃以同音引出下文「さて」之序。
「さて延(は)へし」,「さて」有「因如此之故」之意。然相較於「しか、かく、かくて」等,上代語缺乏「さ、さて」之例,故存疑。「延へ」乃長延之意,表作者心繫伊人。
「夢(いめ)にし見(み)ゆる」,古俗以為對方思慕己身,則將現於自身夢中。然亦有日所思夜所夢之說。

0663 安都宿禰年足歌一首
 佐穗度 吾家之上二 鳴鳥之 音夏可思吉 愛妻之兒
 佐保渡(さほわた)り 我家(わぎへ)の上(うへ)に 鳴鳥(なくとり)の 聲懷(こゑなつ)かしき 愛(は)しき妻子(つまのこ)
 飛渡越佐保 翱翔太虛吾家上 鳴鳥之所如 其音婉囀令人懷 親親摯愛吾妻矣
安都年足 0663

「佐保渡(さほわた)り」,飛越佐保上空。
「鳴鳥(なくとり)の」,以上乃藉比喻起出「聲懷かしき」之序。
「聲懷(こゑなつ)かしき」,其聲甚有魅力。「懷(なつ)かし」表心靈為其牽引,繞樑難絕。
「愛(は)しき妻子(つまのこ)」,「妻子(つまのこ)」之の字乃同位表現。

0664 大伴宿禰像見歌一首
 石上 零十方雨二 將關哉 妹似相武登 言義之鬼尾
 石上(いそのかみ) 降(ふ)るとも雨(あめ)に 障(つつ)まめや 妹(いも)に逢(あは)むと 言(い)ひてし物(もの)を
 石上振布留 大雨雖零豈為障 不畏天降雨 吾已約束與妹逢 信言既出不反爾
大伴像見 0664

「石上(いそのかみ)」,以「石上・布留(ふる)」而為「降(ふ)る」之枕詞。
「障(つつ)まめや」,停滯、關閉之意。止步不前。

0665 安倍朝臣蟲麻呂歌一首
 向座而 雖見不飽 吾妹子二 立離徃六 田付不知毛
 向居(むかひゐ)て 見(み)れども飽(あ)かぬ 我妹子(わぎもこ)に 立離行(たちはなれい)かむ 方法知(たづきし)らずも
 向居坐對面 百般相看兩不厭 親親吾妹子 今與汝別去他方 無計可施徒無奈
安倍蟲麻呂 0665

「我妹子(わぎもこ)に 立離行(たちはなれい)かむ」,此「に」字,作「を」格較常見。
「方法(たづき)」,或書「活計」、「方便」等,有「線索」、「解法」等意。此曲詠離別之哀與無措之愁。

0666 大伴坂上郎女歌二首 【承前。】
 不相見者 幾久毛 不有國 幾許吾者 戀乍裳荒鹿
 相見(あひみ)ぬは 幾久(いくびさ)さにも 有(あ)ら無(な)くに 幾許(ここだ)く我(あれ)は 戀(こ)ひつつもあるか
 離別不相見 未經幾時日未久 然吾甚眷戀 慕情依依幾許長 猶似累月又經年
坂上郎女 0666

「幾久(いくびさ)さにも 有(あ)ら無(な)くに」,相去未久。『新譯法華經』訓「久如」作「いくびさ、ありてか。」
「戀(こ)ひつつもあるか」,文末「か」表詠嘆。

0667 【承前,第二。】
 戀戀而 相有物乎 月四有者 夜波隱良武 須臾羽蟻待
 戀戀(こひこ)ひて 逢(あ)ひたる物(もの)を 月(つき)し有(あ)れば 夜(よ)は隱(こも)るらむ 須臾(しまし)はあり待(ま)て
 戀戀長相思 曠日苦待終相逢 明月掛天中 今離天明有時辰 還願相伴待須臾
坂上郎女 0667
 右,大伴坂上郎女之母石川內命婦與安陪朝臣蟲滿之母安曇外命婦,同居姊妹,同氣之親焉,緣此郎女蟲滿相見不疏,相談既密。聊作戲歌,以為問答也。

「逢(あ)ひたる物(もの)を」,此云曠別已久,終得相逢,其下隱含「何欲速歸」之語。
「月(つき)し有(あ)れば 夜(よ)は隱(こも)るらむ」,此云明月仍高掛天空,離月沉日明尚有時許。
「須臾(しまし)はあり待(ま)て」,「あり」表狀態持續,期望伊人相伴至天明
「同氣之親」,『千字文』有「同氣連枝」云云。『色葉字類抄』云:「同氣,兄弟名。」
按佐注,文言雖述相愛贈答,實則表姊妹間擬情戲作之曲。

0668 厚見王歌一首
 朝爾日爾 色付山乃 白雲之 可思過 君爾不有國
 朝(あさ)に日(け)に 色付(いろづ)く山(やま)の 白雲(しらくも)の 思過(おもひす)ぐべき 君(きみ)に有(あ)ら無(な)くに
 朝朝復日日 黃葉色褪秋山上 白雲轉瞬去 吾人思君深刻骨 豈如浮雲能忘去
厚見王 0668

「朝(あさ)に日(け)に」,每朝每日。
「白雲(しらくも)の」,以上乃藉白雲飄去引出「過」字之序。
「思過(おもひす)ぐべき 君(きみ)に有(あ)ら無(な)くに」,此云浮雲或過而無痕,然對伊人之情豈易忘懷。

0669 春日王歌一首 【志貴皇子之子,母曰多紀皇女也。】
 足引之 山橘乃 色丹出與 語言繼而 相事毛將有
 足引(あしひき)の 山橘(やまたちばな)の 色(いろ)に出(いで)よ 語繼(かたらひつ)ぎて 逢事(あふこと)も有(あ)らむ
 足曳勢險峻 山橘結實發赤赭 若猶彼山橘 露色唯人所語繼 或得有緣再逢哉
春日王 0669

「山橘(やまたちばな)」,藪柑子之古名。自生於山地,花白,果赤。「足引の」乃山之枕詞。
「色(いろ)に出(いで)よ」,此云將情感表露於外。思念伊人,但恐他人察覺,而不露於色。然久待無果,不若刻意發露,令他人謠傳,獲得令伊人耳聞,而得相逢。
「語繼(かたらひつ)ぎて」,口耳相傳。

0670 湯原王歌一首
 月讀之 光二來益 足疾乃 山寸隔而 不遠國
 月讀(つくよみ)の 光(ひかり)に來(き)ませ 足引(あしひき)の 山(やま)き隔(へな)りて 遠(とほ)から無(な)くに
 月讀照晚時 冀褚彼光來吾處 縱需足勞頓 路非曳足險山隔 行道亦非萬里遠
厚見王 0670

「月讀(つくよみ)の」,月之別名。『日本書紀』稱月神\「月弓尊」、「月夜見尊」、「月讀尊」等。以「月讀」書之者,或有訟數月齡之含意。
「山(やま)き隔(へな)りて」,高山居中相隔。「き」字語意不詳,或有「割り」「切り」等插入之意。
此曲,湯原王擬女性催促對象來訪之情而作。

0671 和歌一首 【不審作者。○承前。】
 月讀之 光者清 雖照有 惑情 不堪念
 月讀(つくよみ)の 光(ひかり)は清(きよ)く 照(て)らせれど 惑(まと)へる心(こころ) 思(おも)ひ有(あ)へ無(な)くに
 太陰月讀之 皎月明光雖清冽 照臨曜晚間 然心戀惑緒紊亂 不堪念兮何相往
佚名 0671

「惑(まと)へる心(こころ) 思(おも)ひ有(あ)へ無(な)くに」,因戀而千頭萬緒,縱獲邀約,或難以應之。相對於月光之「照(て)らせ」,「惑(まと)へる」有心中黯淡不知所措之意。「惑」字或本作「或」,意同。

0672 安倍朝臣蟲麻呂歌一首
 倭文手纏 數二毛不有 壽持 奈何幾許 吾戀渡
 倭文手纏(しつたまき) 數(かず)にも有(あ)らぬ 命以(いのちも)て 何(なに)か幾許(ここだく) 我(あ)が戀渡(こひわた)る
 倭文鐶手纏 此身卑賤不足數 吾以此微命 雖知懸殊戶不對 奈何戀渡慕幾許
安倍蟲麻呂 0672

「倭文手纏(しつたまき)」,「數(かず)にも有(あ)らぬ」、「卑(いや)しい」之枕詞。倭文乃日本古代花文單純之織物,手纏則為手環。相對於後世泊來之外國紋樣與寶石、貴金屬等之製品,倭文手纏於當時略顯麤末。
「數(かず)にも有(あ)らぬ 命」,缺乏價值、卑微低賤之命。命之原文「壽」表年齡,而此作「命」、「身」解。相對於女方,自卑身分低微。

0673 大伴坂上郎女歌二首
 真十鏡 磨師心乎 縱者 後爾雖云 驗將在八方
 真十鏡(まそかがみ) 磨(とぎ)し心(こころ)を 許(ゆる)してば 後(のち)に言(い)ふとも 驗有(しるしあ)らめやも
 明澄真十鏡 決心雖磨茢如此 此情若怠緩 其後縱令發悔悟 豈仍有驗可及乎
坂上郎女 0673

「真十鏡(まそかがみ) 磨(とぎ)し心(こころ)を 許(ゆる)してば」,同坂上郎女歌619有「真十鏡 磨ぎし心を 許してし」
「後(のち)に言(い)ふ」,此或責備對方不實之言。

0674 【承前。】
 真玉付 彼此兼手 言齒五十戶常 相而後社 悔二破有跡五十戶
 真玉付(またまつ)く 彼此兼(をちこちか)ねて 言(こと)は言(い)へど 逢(あ)ひて後(のち)こそ 悔(く)いには有(あり)と云(い)へ
 真珠美玉串 貫緒彼此亙永劫 言雖述如此 相逢之後或追悔 世間無常咸如此
坂上郎女 0674

「真玉付(またまつ)く」,以貫玉之「緒(を)」而為「を」之枕詞。
「彼此兼(をちこちか)ねて」,接合來世、現在,此云將來與現在。
「言(こと)は言(い)へど」,縱述花顏巧語。主語包含對象與一般男性。
「悔(く)いには有(あり)と云(い)へ」,「と云へ」乃傳聞之意。會後有悔。

0675 中臣女郎贈大伴宿禰家持歌五首 【五首第一。】
 娘子部四 咲澤二生流 花勝見 都毛不知 戀裳揩可聞
 女郎花(をみなへし) 佐紀澤(さきさは)に生(お)ふる 花勝見(はなかつみ) 嘗(かつ)ても知(し)らぬ 戀(こひ)もする哉(かも)
 七草女郎花 佐紀澤間所生茂 妍麗花勝見 如其花名未嘗知 今當慕戀莫名哉
中臣女郎 0675

「女郎花(をみなへし)」,秋七草之一。此以花開之「咲(さき)」作為引出地名「佐紀澤(さきさは)」之枕詞。
「佐紀澤(さきさは)」,位於平城京北郊之沼澤地。其地以「花勝見」聞名。
「花勝見(はなかつみ)」,未詳。有花菖浦、花真菰等多說。http://www.kamoltd.co.jp/kakegawa/nagata.htm
「嘗(かつ)も知(し)らぬ」,「嘗(かつ)」原文作「都」,乃中華俗語。「かつ」與「勝見」呼應,『古今集』亦有「花勝見」與「且」字雙關之例。 http://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/waka/kokin/kk14.htm

0676 【承前,五首第二。】
 海底 奧乎深目手 吾念有 君二波將相 年者經十方
 海底(わたのそこ) 奧(おき)を深(ふ)かめて 我(あ)が思(おも)へる 君(きみ)には逢(あ)はむ 年(とし)は經(へ)ぬとも
 滄海千尋底 奧津深處無人知 吾心邃所念 慕情甚欲與君逢 縱使經年無所惜
中臣女郎 0676

「海底(わたのそこ)」,「奧(おき)」之枕詞。「奧(おき)」同時蘊含水之深處與心靈深處之意。

0677 【承前,五首第三。】
 春日山 朝居雲乃 欝 不知人爾毛 戀物香聞
 春日山(かすがやま) 朝居(あさゐ)る雲(くも)の 欝(おほほ)しく 知(し)らぬ人(ひと)にも 戀(こ)ふる物哉(ものかも)
 春日山頂上 棚引朝雲之所如 欝欝迷渺茫 不識未嘗逢誤人 何生戀情思慕哉
中臣女郎 0677

「朝居(あさゐ)る雲(くも)の」,此「居(ゐ)る」表朝雲掛於山頂。以上乃起出「欝(おほほ)しく」之序。
「欝(おほほ)しく」,承前表示矇矓迷惘,形象不明,起後表示心情鬱抑。
「知(し)らぬ人(ひと)にも 戀(こ)ふる物哉(ものかも)」,自訝對未曾相識者何來如此戀慕之情。

0678 【承前,五首第四。】
 直相而 見而者耳社 靈剋 命向 吾戀止眼
 直(ただ)に逢(あ)ひて 見(み)てばのみこそ 靈剋(たまきは)る 命(いのち)に向(むか)ふ 我(あ)が戀止(こひや)まめ
 若得直相見 此身相聚晤逢者 玉極靈剋兮 不惜懸命吾戀者 或得中止平息矣
中臣女郎 0678

「靈剋(たまきは)る」,「命(いのち)」、「世」、「內(うち)」之枕詞。
「命(いのち)に向(むか)ふ」,以命為的而向之。有賭命之意。
本歌末二句,與『萬葉集』卷12-2883一云同。

0679 【承前,五首第五。】
 不欲常云者 將強哉吾背 菅根之 念亂而 戀管母將有
 否(いな)と言(い)はば 強(し)ひめや我(わ)が背(せ) 菅根(すがのね)の 思亂(おもひみだ)れて 戀(こ)ひつつも有(あ)らむ
 常言不欲者 或當強晤吾夫矣 菅根生繁茂 吾戀思狂情紊亂 久慕兄子不自己
中臣女郎 0679

「否(いな)と言(い)はば」,此云若是對方(家持)堅持拒絕的話。
「強(し)ひめや我(わ)が背(せ)」,硬是要求見面。作者蓋為家持優柔寡斷之態度所怒。
「菅根(すがのね)の」,「亂」之枕詞。

0680 大伴宿禰家持與交遊別歌三首
 盖毛 人之中言 聞可毛 幾許雖待 君之不來益
 蓋(けだ)しくも 人(ひと)の中言(なかごと) 聞(き)かせ哉(かも) 幾許(ここだ)く待(ま)てど 君(きみ)が來(き)まさぬ
 中傷蜚語等 汝蓋聞人謗語哉 當是虛名起 吾在此間待幾許 君亦不來不相聞
大伴家持 0680

「交遊(とも)」,朋友之意。此蓋大伴家持受友人以冷淡之態度對待,遂作此歌贈之。
「蓋(けだ)しくも」,「恐怕」、「大概」之意。
「中言」,為破壞他人情誼之毀謗中傷。
「聞(き)かせ哉(かも)」,疑問條件詞。蓋是聽信他人中傷,故顯冷淡。

0681 【承前,第二。】
 中中爾 絕年云者 如此許 氣緒爾四而 吾將戀八方
 中中(なかなか)に 絕(た)ゆとし言(い)はば 如此許(かくばか)り 息緒(いきのを)にして 我戀(あれこ)ひめやも
 中中不上下 不若聞汝訴絕緣 吾為戀所苦 懸賭命緒如此許 反覆煎熬愁相思
大伴家持 0681

「中中(なかなか)に」,對不上不下之現狀有所不滿而亟欲突破。
「息緒(いきのを)にして」,「にして」乃表情態之修飾格。

0682 【承前,第三。】
 將念 人爾有莫國 懃 情盡而 戀流吾毳
 思(おも)ふらむ 人(ひと)に有(あ)ら莫(な)くに 懃(ねもころ)に 心盡(こころつ)くして 戀(こ)ふる我哉(あれかも)
 自討沒趣乎 念吾之人莫有兮 吾何以懇懃 情盡心碎熬戀苦 如此單戀哀慕哉
大伴家持 0682

「思(おも)ふらむ 人(ひと)に有(あ)ら莫(な)くに」,無人在意、思念自身。
「懃(ねもころ)に 心盡(こころつ)くして」,一再盡心勞情。

0683 大伴坂上郎女歌七首 【七首第一。】
 謂言之 恐國曾 紅之 色莫出曾 念死友
 謂言(いふこと)の 恐國(かしこきくに)そ 紅(くれなゐ)の 色(いろ)に莫出(ない)でそ 思死(おもひし)ぬとも
 謂言宜慎之 輒言靈異恐國矣 末摘胭脂紅 切莫露色勿輕言 縱令心鬱將戀死
坂上郎女 0683

「謂言(いふこと)の 恐國(かしこきくに)そ」,日本古有言靈信仰,戒慎輕率發言。3253有「葦原の 瑞穗國は 隨神 言舉げせぬ國」云云。輕率、多餘之發言,被視作不及。即便思慕情切,若將戀人之名說出口,恐怕因言語之咒力對其帶來危害。
「紅(くれなゐ)の」,「色(いろ)に出(い)で」之枕詞。「紅(くれなゐ)」即「紅花(べにばな)」,可採作胭脂,別名末摘花。
「色(いろ)に莫出(ない)でそ」,莫露於色,此更作莫說出口。

0684 【承前,七首第二。】
 今者吾波 將死與吾背 生十方 吾二可緣跡 言跡云莫苦荷
 今(いま)は我(あ)は 死(し)なむよ我(わ)が背(せ) 生(い)けりとも 我(あれ)に寄(よ)るべしと 言(い)ふと云(い)は莫(な)くに
 親親吾兄子 我今將死捨娑婆 縱使苟活者 無人謂汝將緣我 渾噩此生有何望
坂上郎女 0684

「生(い)けりとも 我(あれ)に寄(よ)るべしと 言(い)ふと云(い)は莫(な)くに」,「言(い)ふ」之主語乃世人。縱令作者不死,世上亦無人安慰其說戀人將心向於己。

0685 【承前,七首第三。】
 人事 繁哉君之 二鞘之 家乎隔而 戀乍將座
 人言(ひとごと)を 繁(しげ)みや君(きみ)が 二鞘(ふたさや)の 家(いへ)を隔(へだ)てて 戀(こ)ひつついまさむ
 君今作何想 縱令人言蜚語繁 二鞘納雙刀 我倆隔家雖比鄰 汝雖徒戀竟不逢
坂上郎女 0685

「人言(ひとごと)を 繁(しげ)みや君(きみ)が」,或本原文作「繁哉君乎」,然女方訪男方不合俗,蓋如元曆校本等「繁哉君之」為正。
「二鞘(ふたさや)の」,比喻相鄰卻不得會面之枕詞。二鞘乃兩只小刀收於一鞘之二合刀子。正倉院寶物有三合鞘刀子。
本歌云莫在意他人眼目、流言,兩家相去不遠,希望對象能來訪相逢。

0686 【承前,七首第四。】
 比者 千歲八徃裳 過與 吾哉然念 欲見鴨
 比(このころ)は 千年(ちとせ)や行(ゆ)きも 過(す)ぎぬると 我(あれ)や然思(しかおも)ふ 見(み)まく欲(ほ)り哉(かも)
 比日不相見 心焦猶如越千年 苦待守空閨 蓋以吾念如此然 或以欲逢致此哉
坂上郎女 0686

「千年(ちとせ)や行(ゆ)きも 過(す)ぎぬると」,因苦待而心理時間猶如千年。相較於實際「比日」僅數日不見而言。
2539、3470有類歌。

0687 【承前,七首第五。】
 愛常 吾念情 速河之 雖塞塞友 猶哉將崩
 愛(うるは)しと 我(あ)が思(おも)ふ心(こころ) 早川(はやかは)の 塞(せ)きに塞(せ)くとも 猶(なほ)や崩(く)えなむ
 吾心念汝者 愛慕情切無以遏 其猶速荑之 早川急流縱堰之 塞之猶崩無以止
坂上郎女 0687

「愛(うるは)しと 我(あ)が思(おも)ふ心(こころ)」,原文「愛」或可訓「うつくし」然後接「我(あ)が思(おも)ふ」者以「うるはし」為通例。
「塞(せ)きに塞(せ)くとも」,無論如何塞堰,亦無以阻擋急流(情意)。
「猶(なほ)や崩(く)えなむ」,「崩(く)え」乃決堤之意。行間隱有「つつみ(堤防/包覆)」。

0688 【承前,七首第六。】
 青山乎 膻煞雲之 灼然 吾共咲為而 人二所知名
 青山(あをやま)を 膻(よこ)ぎる雲(くも)の 灼然(いちしろ)く 我(あれ)と笑(ゑ)まして 人(ひと)に知(し)らゆ莫(な)
 其猶越青山 膻穿白雲之所如 灼然歷目見 我倆相睦展笑顏 其情莫令他人知
坂上郎女 0688

「青山(あをやま)を 膻(よこ)ぎる雲(くも)の」,引出「灼然く」之序。漂過青山之白雲,對比鮮明。
「灼然(いちしろ)く」,顯著。此云兩人之關係不欲人知,故莫過於張揚。
2762有類歌。

0689 【承前,七首第七。】
 海山毛 隔莫國 奈何鴨 目言乎谷裳 幾許乏寸
 海山(うみやま)も 隔(へだ)たら無(な)くに 何(なに)しかも 目言(めごと)をだにも 幾許乏(ここだとも)しき
 相去不甚遠 非有海山致相隔 何以疎如此 縱令相晤面相言 幾許乏兮莫得哉
坂上郎女 0689

「目言(めごと)をだにも」,光是連面對面相會、對談。作者期望至少能與戀人見上一面。