補給物資、万葉集試訳

■補給物資

万葉集試訳

2222 詠河
 暮不去 河蝦鳴成 三和河之 清荑音乎 聞師吉毛
 夕去(ゆふさ)らず 蛙鳴(かはづな)くなる 三輪川(みわがは)の 清荑音(きよきせのおと)を 聞(き)かくし良(よ)しも
 每逢夕暮時 河鹿蛙聲鳴不斷 御室三輪川 潺潺流水響清茢 聞其荑音吾心暢
佚名 2222

「夕去(ゆふさ)らず」,每夕不遺。
「蛙鳴(かはづな)くなる」,「蛙」概指河鹿蛙,「なり」乃傳聞推定。

2223 詠月 【七首第一。】
 天海 月船浮 桂梶 懸而滂所見 月人壯子
 天海(あめのうみ)に 月舟浮(つきのふねう)け 桂楫(かつらかぢ) 懸(か)けて漕見(こぐみ)ゆ 月人壯士(つきひとをとこ)
 遙遙久方兮 天海滄溟泛月舟 手執桂楫而 榜在星林狀可見 岐嶷月人壯士矣
佚名 2223

「天海(あめのうみ)に 月舟浮(つきのふねう)け」,以天為海,以月為舟之譬喻表現。
「桂楫(かつらかぢ)」,以月中巨桂之枝為船楫。『懷風藻』文武帝詩云:「月舟移霧渚 楓楫泛霞濱」。https://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/waka/kaifuu/kaifuu01.htm#monmu
類歌1068。 https://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/waka/manyou/m07.htm#1068

2224 【承前,七首第二。】
 此夜等者 沙夜深去良之 鴈鳴乃 所聞空從 月立度
 此夜等(このよら)は 小夜更(さよふ)けぬらし 雁(かり)が音(ね)の 聞(き)こゆる空(そら)ゆ 月立渡(つきたちわた)る
 吾度此夜等 其夜更晚深去矣 何以知悉者 今聞雁音蕩太虛 月渡中天狀可見
佚名 2224

「聞(き)こゆる空(そら)ゆ」,「ゆ」表經由點。
「月立渡(つきたちわた)る」,「月立(つきた)ち」表明月現其姿形。
類歌1701。https://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/waka/manyou/m09.htm#1701

2225 【承前,七首第三。】
 吾背子之 插頭之芽子爾 置露乎 清見世跡 月者照良思
 我(わ)が背子(せこ)が 髻首(かざし)の萩(はぎ)に 置露(おくつゆ)を 清(さや)かに見(み)よと 月(つき)は照(て)るらし
 親親吾夫子 所以髻首秋萩上 晶瑩置露矣 蓋欲使妾觀甚詳 明月照臨歷清清
佚名 2225

「髻首(かざし)の萩(はぎ)に」,「髻首(かざし)」指以花木插於髮上以為裝飾。
「清(さや)かに見(み)よと」,推測明月照覽之緣由。

2226 【承前,七首第四。】
 無心 秋月夜之 物念跡 寐不所宿 照乍本名
 心無(こころな)き 秋月夜(あきのつくよ)の 物思(ものおも)ふと 寐寢(いのね)らえぬに 照(て)りつつ元無(もとな)
 不能識時務 頑冥無心秋月夜 當吾苦憂思 輾轉不得寐寢時 無由徒照更煩心
佚名 2226

「心無(こころな)き」,欠缺思慮,無法為人著想。無法體會作者鬱悶之心情。
「寐寢(いのね)らえぬに」,無法入睡。

2227 【承前,七首第五。】
 不念爾 四具禮乃雨者 零有跡 天雲霽而 月夜清焉
 思(おも)はぬに 時雨雨(しぐれのあめ)は 降(ふ)りたれど 天雲晴(あまくもは)れて 月夜清(つくよさや)けし
 始料雖未及 時雨之雨忽驟降 然而仰首望 叢雲排開天既霽 明月照臨夜清清
佚名 2227

「思(おも)はぬに」,「ぬに」用於逆接,卻不如「ねど」強烈。此同時發生事項之上位呈現。

2228 【承前,七首第六。】
 芽子之花 開乃乎再入緒 見代跡可聞 月夜之清 戀益良國
 萩花(はぎのはな) 咲撓(さきのををり)を 見(み)よとかも 月夜清(つくよのきよ)き 戀筯(こひま)さらくに
 秋荻芽子花 亂咲絢爛撓枝垂 蓋欲詳端之 明月照覽夜清清 其戀更添當何如
佚名 2228

「咲撓(さきのををり)」,「撓(をを)り」表花咲絢爛、枝葉重垂等植物茂盛之狀。
「戀筯(こひま)さらくに」,翫荻之心更筯。擔心更愛荻而無法平常心。

2229 【承前,七首第七。】
 白露乎 玉作有 九月 在明之月夜 雖見不飽可聞
 白露(しらつゆ)を 玉(たま)に作(な)したる 九月(ながつき)の 有明月夜(ありあけのつくよ) 見(み)れど飽(あ)かぬかも
 晶瑩白露矣 怠作珠玉誠難辨 長月九月之 曉闇有明之月夜 雖見百度未嘗厭
佚名 2229

「玉(たま)に作(な)したる」,「作(な)す」表錯作、混作。
有明月夜(ありあけのつくよ)」,拂曉之際仍掛於天空之月。農曆廿日之後之景象。

2230 詠風 【三首第一。】
 戀乍裳 稻葉搔別 家居者 乏不有 秋之暮風
 戀(こひ)つつも 稻葉搔別(いなばかきわ)け 家居(いへを)れば 乏(とも)しくも非(あら)ず 秋夕風(あきのゆふかぜ)
 思鄉戀至親 隻身在外別稻葉 苅搔秋稔間 身居假廬不所乏 秋之暮風吹瑟瑟
佚名 2230

「戀(こひ)つつも」,此云收割之時,在外搭設假廬,而思念家裡。
「家居(いへを)れば」,對於暫居假廬之誇張表現。
「乏(とも)しくも非(あら)ず 秋夕風(あきのゆふかぜ)」,不乏涼爽之秋風。多少有自嘲、諷刺之意味。

2231 【承前,三首第二。】
 芽子花 咲有野邊 日晚之乃 鳴奈流共 秋風吹
 萩花(はぎのはな) 咲(さき)たる野邊(のへ)に 蜩(ひぐらし)の 鳴(な)くなる共(なへ)に 秋風吹(あきのかぜふ)く
 秋萩芽子花 所以盛咲野邊間 其隨日晚之 暮蟬鳴泣聲與共 蕭瑟秋風吹戚戚
佚名 2231

「蜩(ひぐらし)」,或為初秋之茅蜩(かなかな蟬),或為寒蟬(つくつく法師)。
「鳴(な)くなる共(なへ)に」,「なり」乃傳聞推定,「なへ」表與共。

2232 【承前,三首第三。】
 秋山之 木葉文未 赤者 今旦吹風者 霜毛置應久
 秋山(あきやま)の 木葉(このは)も未(いま)だ 赤變(もみ)たねば 今朝吹(けさふ)く風(かぜ)は 霜(しも)も置(お)きぬべく
 吾望秋山之 山間木葉未黃變 還思秋未深 怎知今旦吹風者 其寒若要置霜冷
佚名 2232

木葉(このは)も未(いま)だ 赤變(もみ)たねば」,「ねば」乃逆接用法。
「霜(しも)も置(お)きぬべく」,其下省略「寒しあり」。

2233 詠芳
 高松之 此峯迫爾 笠立而 盈盛有 秋香乃吉者
 高松(たかまつ)の 此峰(このみね)も狹(せ)に 笠立(かさた)てて 滿盛(みちさか)りたる 秋香(あきのか)の良(よ)さ
 寧樂高松之 此峰迫狹地不廣 茸蓋立笠而 滿生遍布盈盛之 秋香濃郁豈非善
佚名 2233

「芳(か)」,此云松茸之香味。
「此峰(このみね)も狹(せ)に」,此峰地狹,卻似將之填滿。
「秋香(あきのか)の良(よ)さ」,原文者字雖為助字,亦有さ之音假名之作用。

2234 詠雨 【四首第一。】
 一日 千重敷布 我戀 妹當 為暮零所見
 一日(ひとひ)にも 千重(ちへ)に頻(しくし)く 我(あ)が戀(こ)ふる 妹(いも)が邊(あたり)に 時雨降(しぐれふ)る見(み)ゆ
 短短一日間 相思憂情敷千重 吾之所戀慕 朝思暮想伊人許 時雨紛降今可見
柿本人麻呂 2234
 右一首,柿本朝臣人麻呂之歌集出。

「一日(ひとひ)にも」,原文唯誌「一日」,舊訓多採「一日には」,此依元曆校本作「一日にも」,有短短一之內幾度思念不止之意。
「頻(しくし)く」,持續反覆、頻繁地。
「時雨降(しぐれふ)る見(み)ゆ」,原文或書「為暮零禮見」,此依『萬葉集略解』以「禮」為「所」之訛。

2235 【承前,四首第二。】
 秋田苅 客乃廬入爾 四具禮零 我袖沾 干人無二
 秋田刈(あきたか)る 旅廬(たびのいほり)に 時雨降(しぐれふ)り 我(わ)が袖濡(そでぬ)れぬ 乾(ほ)す人無(ひとな)しに
 為苅秋田而 旅居假廬客異地 時雨降紛紛 我袖漬濡凍淒涼 無人乾之更寂寥
佚名 2235

「旅廬(たびのいほり)に」,旅乃宿泊於自家之外的地點。此云收割前後,暫居田野邊之假廬。
「乾(ほ)す人無(ひとな)しに」與「袖まき干さむ 人もあら無くに」相類。https://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/waka/manyou/m10.htm#2321

2236 【承前,四首第三。】
 玉手次 不懸時無 吾戀 此具禮志零者 沾乍毛將行
 玉襷(たまだすき) 懸(か)けぬ時無(ときな)き 我(あ)が戀(こひ)は 時雨(しぐれ)し降(ふ)らば 濡(ぬ)れつつも行(ゆ)かむ
 玉襷掛手繦 無時不刻莫懸心 吾戀常曝外 若逢時雨驟降者 必然將沾為濡濕
佚名 2236

「玉襷(たまだすき)」,以珠玉裝飾之襷,「懸(か)く」之枕詞。
「懸(か)けぬ時無(ときな)し」,原文「不懸時無」舊訓「懸(か)けぬ時無(ときな)し」,若此則第三句為倒置而第一二句之主格。
「我(あ)が戀(こひ)は」,其下或省略「と思ふばかりぞ」之語。

2237 【承前,四首第四。】
 黃葉乎 令落四具禮能 零苗爾 夜副衣寒 一之宿者
 黃葉(もみちば)を 散(ち)らす時雨(しぐれ)の 降(ふ)るなへに 夜(よ)さへそ寒(さむ)き 獨(ひとり)し寢(ぬ)れば
 欲摧秋黃葉 令散零落時雨降 和之相與共 今宵夜冷凍骨寒 孤寢難眠更添愁
佚名 2237

「降(ふ)るなへに」,「なへに」於茲為繼起用法。
「夜(よ)さへそ寒(さむ)き」,非但日間冷冽,連包裹著寢具之夜間亦異常寒冷。

2238 詠霜
 天飛也 鴈之翹乃 覆羽之 何處漏香 霜之零異牟
 天飛(あまと)ぶや 雁翼(かりのつばさ)の 覆羽(おほひば)の 何處漏(いづくも)りてか 霜降(しものふ)りけむ
 翱翔飛天也 飛雁之翼馳虛空 蓋是其覆羽 漏於何處所致哉 霜之零矣降斑白
佚名 2238

「天飛(あまと)ぶや」,「や」乃用於連體格之下的間投助詞。
「雁翼(かりのつばさ)の」,多數寫本原文作「鴈之翅乃」,此依元曆校本作「鴈之翹乃」。『楚辭』招魂王逸注云「翹,羽也。」3345亦同。
「何處漏(いづくも)りてか」,「漏(も)る」乃四段活用自動詞。

秋相聞
2239 相聞 【五首第一。】
 金山 舌日下 鳴鳥 音谷聞 何嘆
 秋山(あきやま)の 下緋(したひ)が下(した)に 鳴鳥(なくとり)の 聲(こゑ)だに聞(き)かば 何(なに)か嘆(な)げかむ
 蕭瑟秋山間 下緋紅葉之蔭處 鳴鳥之所如 啼鳴之聲若可聞 何須愁嘆哀如此
柿本人麻呂 2239

「秋山(あきやま)の」,原文「金山」依陰陽五行說而致。
「下緋(したひ)が下(した)に」,「下緋(したひ)」乃染上紅色之「したふ」之名詞態。與卷九「下緋山」https://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/waka/manyou/m09.htm#1792 同。又卷二0217「したへる妹」乃動詞型。
「鳴鳥(なくとり)の」,以上三句,引出下文「聲(こゑ)」之序。
「聲(こゑ)だに聞(き)かば」,だに有至少之意。有雖然無法立刻見面之餘韻。

2240 【承前,五首第二。】
 誰彼 我莫問 九月 露沾乍 君待吾
 誰彼(たそかれ)と 我(あれ)を莫問(なと)ひそ 九月(ながつき)の 露(つゆ)に濡(ぬ)れつつ 君待(きみま)つ我(あれ)を
 所在誰彼哉 切莫以此言問我 九月秋夜長 強忍雨露沾漬濕 殷切待君妾身矣
柿本人麻呂 2240

「誰彼(たそかれ)」,所在何人。「そ」與「か」同義,乃伴隨疑問與之係助詞。「彼(か)」、「彼(かれ)」、「彼(かの)」乃遠稱指示語。雖有上代語中遠稱未發達之說,然『古事記』中既有多例。金以「誰彼(たそかれ)」為黃昏者,乃其衍伸之意。
「我(あれ)を莫問(なと)ひそ」,上代語「問(と)ふ」以「を」連結,不似現代之「に」。

2241 【承前,五首第三。】
 秋夜 霧發渡 凡凡 夢見 妹形矣
 秋夜(あきのよ)の 霧立渡(きりたちわた)り 欝(おほほ)しく 夢(いめ)にそ見(み)つる 妹(いも)が姿(すがた)を
 洽猶秋夜間 所湧迷霧之所如 晦澀迷濛而 邯鄲夢田得瞥見 相思吾妹光儀矣
柿本人麻呂 2241

「霧立渡(きりたちわた)り」,以上,引出「欝(おほほ)しく」之序。
「欝(おほほ)しく」,迷濛不明瞭之狀。原文或作「夙夙」,按『萬夜考』則為「凡凡」之訛。

2242 【承前,五首第四。】
 秋野 尾花末 生靡 心妹 依鴨
 秋野(あきのの)の 尾花(をばな)が末(うれ)の 生靡(おひなび)き 心(こころ)は妹(いも)に 寄(よ)りにけるかも
 蕭瑟秋野間 尾花芒草末穗者 風行草自偃 所靡一方似何者 猶吾鍾情唯寄汝
柿本人麻呂 2242

「生靡(おひなび)き」,以上乃引出最後二句之序。
「心(こころ)は妹(いも)に 寄(よ)りにけるかも」,此心只作者之心。


2243 【承前,五首第五。】
 秋山 霜零覆 木葉落 歲雖行 我忘八
 秋山(あきやま)に 霜降覆(しもふりおほ)ひ 木葉散(このはち)り 年(とし)は行(ゆ)くとも 我忘(われわす)れめや
  寂寥秋山間 冰霜降置覆斑駁 木葉凋零而 不與君逢年雖暮 吾常懸心豈忘哉
柿本人麻呂 2243
 右,柿本朝臣人麻呂之歌集出。

「年(とし)は行(ゆ)くとも」,其上省略「妹に逢はずて」或「君に逢はずて」之類。

2244 寄水田 【八首第一。】
 住吉之 岸乎田爾墾 蒔稻 乃而及苅 不相公鴨
 住吉(すみのえ)の 岸(きし)を田(た)に墾(は)り 蒔(ま)きし稻(いね) 斯(か)くて刈(か)る迄(まで) 逢(あ)はぬ君(きみ)かも
 墨江住吉之 崖岸開墾以為田 於茲所蒔稻 及於熟稔將苅時 不得與逢吾君矣
佚名 2244

「岸(きし)を田(た)に墾(は)り」,住吉之「岸(きし)」或書作「崖(きし)」(例:0069、3197等。https://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/waka/manyou/m01.htm#0069 )。當時,住吉海岸蓋有海蝕崖地形,作者或在其上台地開墾田圃
「蒔(ま)きし稻(いね)」,奈良時代之水田,已非直播而採田植方式。
「斯(か)くて刈(か)る迄(まで)」,原文「乃而及苅」之「乃而」現代多讀作「さて」,而上代語無此確例。故此訓做「斯(か)くて」,與2329之「然而」同。古本『玉篇』作「乃猶而」。

2245 【承前,八首第二。】
 剱後 玉纏田井爾 及何時可 妹乎不相見 家戀將居
 太刀後(たちのしり) 玉纏田居(たままきたゐ)に 何時迄(いつまで)か 妹(いも)を相見(あひみ)ず 家戀居(いへこひを)らむ
 華飾剱鞘兮 玉纏沃地田居間 不得與妻逢 形單影孤苦思鄉 直至何時得止歟
佚名 2245

「太刀後(たちのしり) 玉纏田居(たままきたゐ)に」,「太刀後(たちのしり)」概指刀鞘,「玉纏(たまま)き」指鑲嵌寶玉。伊勢神宮神寶有「玉纏膻刀」,於刀鞘嵌上約三百箇寶石。故此以「太刀後(たちのしり)」作為地名「玉纏(たままき)」之枕詞。玉纏,所在未詳。田居乃田地之意,「居(ゐ)」指堰止流水,轉作水田之呼稱。
蓋為離家獨居田邊假廬之男子之曲。

2246 【承前,八首第三。】
 秋田之 穗上置 白露之 可消吾者 所念鴨
 秋田(あきのた)の 穗上(ほのうへ)に置(お)ける 白露(しらつゆ)の 消(け)ぬべくも我(あれ)は 思(おも)ほゆるかも
 熟稔秋田之 穗稍之末上所置 白露之所如 吾身猶露將消散 念君我心怠毀滅
佚名 2246

「白露(しらつゆ)の」,以上三句乃下句「消(け)ぬべく」之序。
「消(け)ぬべくも我(あれ)は」,因強烈之思念而痛不欲生。
類歌1564。https://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/waka/manyou/m08.htm#1564

2247 【承前,八首第四。】
 秋田之 穗向之所依 片緣 吾者物念 都禮無物乎
 秋田(あきのた)の 穗向(ほむき)の寄(よ)れる 片寄(かたよ)りに 我(あれ)は物思(ものおも)ふ 由緣無(つれな)き物(もの)を
 禾稼秋田之 稻穗撓靡寄一方 吾欲如穗傾 單戀無報苦憂思 徒然寄心無情人
佚名 2247

「穗向(ほむき)の寄(よ)れる」,如稻穗往一個方向撓曲般一方地。
「由緣無(つれな)き物(もの)を」,無緣、無關心,落花有意流水無情。
類歌114 https://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/waka/manyou/m02.htm#0114

2248 【承前,八首第五。】
 秋田苅 借廬作 五百入為而 有藍君叫 將見依毛欲得
 秋田刈(あきたか)る 假廬作(かりいほつく)り 廬(いほ)りして あるらむ君(きみ)を 見(み)む由欲得(よしもがも)
 奉為苅秋田 權設假廬築田居 草枕在外地 形單影隻吾君矣 還願有由能相晤
佚名 2248

「秋田刈(あきたか)る」,仙覺系底本原文作「秋田𠮧」,舊訓「秋田(あきのた)を」,此按『萬葉考』以叫為苅之訛。元曆校本等非仙覺系底本原文或作「秋山𠮧」,與題詞「寄水田」不合,蓋誤。
「廬(いほ)りして」,建築假廬居之。收割前後,設屋田邊。
蓋擬農夫之妻之趣。

2249 【承前,八首第六。】
 鶴鳴之 所聞田井爾 五百入為而 吾客有跡 於妹告社
 鶴(たづ)が音(ね)の 聞(き)こゆる田居(たゐ)に 廬(いほ)りして 我旅也(あれたびなり)と 妹(いも)に告(つ)げこそ
 鶴鳴蕩虛空 啼聲可聞田居間 吾人假廬而 草枕客在於茲也 還望傳言告妻知
佚名 2249

「廬(いほ)りして」,原文與前歌皆為「五百入為而」,當是問答之作。
「我旅也(あれたびなり)と」,此處「也(なり)」乃「に在(あ)り」之略。
「妹(いも)に告(つ)げこそ」,「こそ」表希求終助詞。蓋為囑託鳴鶴傳言之趣。

2250 【承前,八首第七。】
 春霞 多奈引田居爾 廬付而 秋田苅左右 令思良久
 春霞(はるかすみ) 棚引(たなび)く田居(たゐ)に 廬築(いほつ)きて 秋田刈(あきたか)る迄(まで) 思(おも)はしむらく
 自於春霞湧 霏霺懸引田居間 以至設假廬 秋稔結穗收割頃 單戀相思無止哉
佚名 2250

「春霞(はるかすみ) 棚引(たなび)く」,雖為過去事項,但依恆常事實而作現在形。
「廬築(いほつ)きて」,『和名鈔』云:「農人作廬,以便田事。」
「思(おも)はしむらく」,「思(おも)はしむ」之く句法。主語乃女性。
以作者單戀怪罪對方之內容,而田圃景色由春霞至秋田之時節更迭乃趣味之中旨。

2251 【承前,八首第八。】
 橘乎 守部乃五十戶之 門田年稻 苅時過去 不來跡為等霜
 橘(たちばな)を 守部里(もりへのさと)の 門田早稻(かどたわせ) 刈(か)る時過(ときす)ぎぬ 來(こ)じとすらしも
 吾人有所思 非時香菓橘實兮 守部里門田 早稻苅時早過矣 蓋是移情不復來
佚名 2251

「橘(たちばな)を」,守部之枕詞。往時橘為高級果物,故常設有戍衛守之。
「守部里(もりへのさと)」,所在未詳。「里」之原文「五十戶」者,依五十戶為一里之制度,略見於七世紀後半至八世紀初頭。
「來(こ)じとすらしも」,應當不復在來。農忙時期早已過去,如今不復來應當不以無暇,蓋是已然移情別戀。

2252 寄露 【八首第一。】
 秋芽子之 開散野邊之 暮露爾 沾乍來益 夜者深去鞆
 秋萩(あきはぎ)の 咲散(さきち)る野邊(のへ)の 夕露(ゆふつゆ)に 濡(ぬ)れつつ來(き)ませ 夜(よ)は更(ふ)けぬとも
 一心盼君臨 秋荻咲散小野中 還願君有情 暮露沾襟越野來 縱令夜深不辭勞
佚名 2252

「咲散(さきち)る野邊(のへ)の」,複合語「咲散(さきち)る」之「咲(さ)き」幾近無義。
本曲與『古今和歌集』秋歌上0224「萩花 散るらむ小野の 露霜に 濡れてを行かむ 小夜は更くとも」https://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/waka/kokin/kk04.htm#224 宛若唱和。

2253 【承前,八首第二。】
 色付相 秋之露霜 莫零根 妹之手本乎 不纏今夜者
 色付(いろづ)かふ 秋露霜(あきのつゆしも) 莫降(なふ)りそね 妹(いも)が手本(たもと)を 枕(ま)かぬ今夜(こよひ)は
 為木添新色 秋之冷冽露霜矣 還願莫零降 隻身孤寢無人伴 不枕妻腕今夜者
佚名 2253

「色付(いろづ)かふ」,「色付(いろづ)く」之持續態。群樹木葉因而添色之意。秋山染色乃秋露之功,亦同時指其寒冷。
「妹(いも)が手本(たもと)を」,「手本(たもと)」指手腕。
「枕(ま)かぬ今夜(こよひ)は」,孤寢寂寞,倍感寒冷。

2254 【承前,八首第三。】
 秋芽子之 上爾置有 白露之 消鴨死猿 戀乍不有者
 秋萩(あきはぎ)の 上(うへ)に置(お)きたる 白露(しらつゆ)の 消(け)かもしな益(まし) 戀(こ)ひつつ有(あ)らずは
 不若猶秋萩 葉上所置白露之 消散不留蹤 一了百了絕命緒 勝過苦戀愁斷腸
佚名 2254

「白露(しらつゆ)の」,以上三句,帶出「消(け)」之序。
「消(け)かもしな益(まし)」,「な」為完了助動詞「ぬ」之未然形。
「戀(こ)ひつつ有(あ)らずは」,原文或作「戀爾不有者」,依『元曆校本』以為「戀乍不有者」之訛。
1608弓削皇子歌重出。https://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/waka/manyou/m08.htm#1608

2255 【承前,八首第四。】
 吾屋前 秋芽子上 置露 市白霜 吾戀目八面
 我(わ)が宿(やど)の 秋萩上(あきはぎのうへ)に 置露(おくつゆ)の 顯著(いちしろ)くしも 我戀(あれこ)ひめやも
 吾宿屋前之 庭園秋萩芽子上 置露引側目 如此顯著令人知 張揚之戀豈為哉
佚名 2255

「置露(おくつゆ)の」,以上三句,引出「顯著(いちしろ)くしも」之序。
「顯著(いちしろ)くしも」,顯著的,「顯著(いちしろ)し」乃く活用形。

2256 【承前,八首第五。】
 秋穗乎 之努爾押靡 置露 消鴨死益 戀乍不有者
 秋穗(あきのほ)を 繁(しの)に押靡(おしな)べ 置露(おくつゆ)の 消(け)かもしな益(まし) 戀(こ)ひつつ在(あ)らずは
 不若猶秋穗 豐稔撓屈末穗上 置露之所如 俄然消逝絕命緒 勝過苦戀愁斷腸
佚名 2256

「繁(しの)に押靡(おしな)べ」,「繁(しの)」表毫無間隙。『萬葉集』中,除此處以外,皆採「心を繁(しの)に」之用法。「靡(な)べ」乃「靡(な)びかせ」之意。

2257 【承前,八首第六。】
 露霜爾 衣袖所沾而 今谷毛 妹許行名 夜者雖深
 露霜(つゆしも)に 衣手濡(ころもでぬ)れて 今(いま)だにも 妹許行(いもがりゆ)かな 夜(よ)は更(ふ)けぬとも
 一心繫伊人 雖然露霜濕衣袖 吾不以為意 只願即刻赴妹許 縱令夜深不辭勞
佚名 2257

「衣手濡(ころもでぬ)れて」,衣手乃衣之雅語。
「今(いま)だにも」,表達現在立刻之願望。