補給物資、万葉集試訳

■補給物資

  • 神社百景DVDコレクション全国版3 熊野三山
  • Dies irae ~Interview with Kaziklu Bey~ オリジナルミニアルバム「Dominus tecum」

神社百景DVDコレクション全国版3 熊野三山

明らかに編輯は出雲大社伊勢神宮と違う。伊藤英明が前に出すぎに対して堤真一が声のみとなります。カメラワークには少々不安定に見えます。
もっと熊野古道を紹介してくれればよかったかもしれません。神倉神社を漏れないのは有り難い話で、花の窟も紹介できればさらにいいではないかと。
もし南方熊楠折口信夫をモデルとした三島由紀夫『三熊野詣』の話があればなお更有り難くなります。



万葉集試訳

0815 梅花歌卅二首 【并序。】
 天平二年正月十三日,萃于帥老之宅,申宴會也。于時,初春令月,氣淑風和。梅披鏡前之粉,蘭蟬珮後之香。加以,曙嶺移雲,松掛羅而傾蓋,夕岫結霧,鳥封穀而迷林。庭舞新蝶,空歸故鴈。於是,蓋天坐地,促膝飛觴。忘言一室之裏,開衿煙霞之外。淡然自放,快然自足。若非翰苑,何以攄情。請紀落梅之篇,古今夫何異矣。宜賦園梅,聊成短詠。
大伴旅人山上憶良


短詠 【卅二之一。】
 武都紀多知 波流能吉多良婆 可久斯許曾 烏梅乎乎岐都都 多努之岐乎倍米 【大貳紀卿。】
 正月立(むつきた)ち 春來(はるのきた)らば 如是(かく)しこそ 梅(うめ)を招(を)きつつ 樂(たの)しき終(を)へめ 【大貳紀卿(だいにききゃう)。】
 每逢正月至 東風解冰春臨者 歲歲復年年 如是招梅迎新春 盡歡宴飲慶復始
紀男人 0815

「并序」,此序作者有諸說。催宴者乃大伴旅人,而實質作者蓋山上憶良乎。語中多見王羲之「蘭亭序」、王勃、駱賓王詩序之影。
「帥老」,此云大宰帥大伴旅人,年方六十六。老為敬稱。依之可知序之實質作者非旅人。
「初春令月,氣淑風和。」,令月乃佳月之意,此譽正月而為言。氣指氣象、氣候。『蘭亭序』有「天朗氣清,惠風和暢。」之語。
「梅披鏡前之粉」,此以女性鏡前白粉之妝,喻梅花色之白。梁何遜『詠春風』云:「鏡前飄落粉。」
「蘭蟬珮後之香」,蘭乃芝蘭,或指同心之友。珮乃納各種香而繫於腰間之袋。後字相對前句鏡前而言。
「松掛羅而傾蓋」,羅乃薄絹,蓋為貴仁出門時所用之長傘。
「岫」,或坐峰,開穴之山形。
「鳥封穀而迷林」,穀乃薄絹之類,或云霧穀。穀字「禾」實乃「糸」字。
「故鴈」,去年亦來之鴈。故字相對於新蝶。
「蓋天坐地」,典出『淮南子』「以天為蓋,以地為輿。」
「促膝飛觴」,促膝表親睦,飛觴表酒杯來回之狀。
「翰苑」,詩文之苑,此云文筆。
「園梅」,梁簡文帝有「園梅斂新衰」之語。
「梅(うめ)を招(を)きつつ」,招待迎梅。將梅花擬人化之語。
「樂(たの)しき終(を)へめ」,盡歡,『萬葉集』中多指飲酒之樂。

0816 【承前,卅二之二。】
 烏梅能波奈 伊麻佐家留期等 知利須義受 和我霸能曾能爾 阿利己世奴加毛 【少貳小野大夫。】
 梅花(うめのはな) 今咲(いまさ)ける如(ごと) 散過(ちりす)ぎず 我(わ)が家園(へのその)に 在(あり)こせぬかも 【少貳小野大夫(せうにをのだいぶ)。】
 今見此梅花 盛咲之後未散盡 風情洽宜矣 還願吾家庭園間 殘梅如是莫盡落
小野老 0816

「我(わ)が家(へ)」,「我(わ)が家(いへ)」之略,或略作「我家(わぎへ)」。
「在(あり)こせぬかも」,「こせ」為「くれる」之意,而「ぬかも」表希求。

0817 【承前,卅二之三。】
 烏梅能波奈 佐吉多流僧能能 阿遠也疑波 可豆良爾須倍久 奈利爾家良受夜 【少貳粟田大夫。】
 梅花(うめのはな) 咲(さ)きたる園(その)の 青柳(あをやぎ)は 蘰(かづら)にすべく 成(なり)にけらずや 【少貳粟田大夫(せうにあはただいぶ)。】
 今見梅花咲 一片繁開此園間 青柳發新䖝 能結為蘰飾首上 芽生更新湧命息
粟田人上 0817

「蘰(かづら)」,以蔓性植物或柳枝結為輪狀之髮飾。
「成(なり)にけらずや」,表示某事實,喚起注意或求取同意之語法。

0818 【承前,卅二之四。】
 波流佐禮婆 麻豆佐久耶登能 烏梅能波奈 比等利美都都夜 波流比久良佐武 【筑前守山上大夫。】
 春去(はるさ)れば 先咲(まづさ)く宿(やど)の 梅花(うめのはな) 獨見(ひとりみ)つつや 春日暮(はるひく)らさむ  【筑前守山上大夫(ちくぜんのかみやまのうへだいぶ。)】
 每臨新春至 身居早咲宿庭間 獨見翫春梅 隻身吟味無人擾 終日如此暮春時
山上憶良 0818

「宿(やど)」,人所居住之空間,且多指植有草木庭院之處。ど字當為甲類萬葉假名,原文作「耶登」者違例。
「獨見(ひとりみ)つつや」,詠嘆句法。按獨字可知憶良所處為自宅。

0819 【承前,卅二之五。】
 余能奈可波 古飛斯宜志惠夜 加久之阿良婆 烏梅能波奈爾母 奈良麻之勿能怨 【豐後守大伴大夫。】
 世中(よのなか)は 戀繁(こひしげ)しゑ哉(や) 如是(かく)しあらば 梅花(うめのはな)にも 成(な)ら益物(ましもの)を 【豐後守大伴大夫(とよくにのみちのしりのかみおほともだいぶ)。】
 空蟬憂世間 心煩戀苦如是哉 與其處火宅 不若化作梅花者 反得逍遙獲自在
大伴三依 0819

「戀繁(こひしげ)しゑ哉(や)」,「繁(しげ)し」表毫無間斷,「ゑ」表痛苦、不快之情感之感動詞。「哉(や)」為詠嘆助詞。
「梅花(うめのはな)にも 成(な)ら益物(ましもの)を」,讚歎、稱羨無心之梅花。
「豐後守大伴大夫」,未詳。或指大伴三依,或指大伴宿禰麻呂。

0820 【承前,卅二之六。】
 烏梅能波奈 伊麻佐可利奈理 意母布度知 加射之爾斯弖奈 伊麻佐可利奈理 【筑後守葛井大夫。】
 梅花(うめのはな) 今盛(いまさか)り也(なり) 思(おも)ふ共(どち) 髮插(かざ)しにしてな 今盛(いまさか)り也(なり) 【筑後守葛井大夫(ちくごのかみふぢゐだいぶ)。】
 梅花匂清雅 今時盛開咲一面 志同道合者 速速折枝以髻首 梅今盛咲誠絢爛
葛井大成 0820

「思(おも)ふ共(どち)」,氣同道合之同志、夥伴。
「髮插(かざ)しにしてな」,「髮插(かざ)し」乃「髮插(かみざ)し」之略。以花木之枝次於髮上為飾。て乃完了助詞つ之未然形。な乃接於未然形後表意志與勸誘之終助詞。

0821 【承前,卅二之七。】
 阿乎夜奈義 烏梅等能波奈乎 遠理可射之 能彌弖能能知波 知利奴得母與斯 【笠沙彌。】
 青柳(あをやなぎ) 梅(うめ)との花(はな)を 折餝(をりかざ)し 飲(の)みての後(のち)は 散(ち)りぬ共良(ともよ)し 【笠沙彌(かさのさみ)。】
 今摘青柳花 又折白梅花以餝 髻首蔓與枝 盡歡宴飲酒酣後 散華吹雪亦宜矣
沙彌滿誓 0821

「青柳(あをやなぎ) 梅(うめ)との花(はな)を」,破格表現,當為「青柳と梅の花とを」。柳多作為蔓,但亦時有插頭之例。(1856)
「折餝(をりかざ)し」,由573「鄢髮變り 白けても」可知滿誓乃帶髮沙彌。
「散(ち)りぬ共良(ともよ)し」,放任表現。在宴飲之後,花散亦無不可。

0822 【承前,卅二之八。】
 和何則能爾 宇米能波奈知流 比佐可多能 阿米欲里由吉能 那何列久流加母 【主人。】
 我(わ)が園(その)に 梅花散(うめのはなち)る 久方(ひさかた)の 天(あめ)より雪(ゆき)の 流來(ながれく)る哉(かも) 【主人(あるじ)。】
 梅散吾苑中 落花紛紛添皓白 疑是久方遙 遠自萬丈高天上 飄舞零雪流來哉
大伴旅人 0822

「天(あめ)より雪(ゆき)の 流來(ながれく)る哉(かも)」,以雪欲花落之狀。流者乃雨、雪、花等持續降下之狀。以雪喻梅者,多見於六朝詩。旅人於『懷風藻』亦有詩云「𥶡政情既遠 迪古道惟新 穆穆四門客 濟濟三紱人 梅雪亂殘岸 煙霞接早春 共遊聖主澤 同賀擊壤仁」http://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/waka/kaifuu/kaifuu02.htm#ootomo_tabito

0823 【承前,卅二之九。】
 烏梅能波奈 知良久波伊豆久 志可須我爾 許能紀能夜麻爾 由企波布理都都 【大監伴氏百代。】
 梅花(うめのはな) 散(ち)らくは何方(いづ)く 然(しか)すがに 此城山(このきのやま)に 雪(ゆき)は降(ふ)りつつ 【大監伴氏百代だいけんばんじのももよ。】
 汝云梅花落 所謂散華在何方 迴見顧四方 此城山間無花落 唯有零雪降紛紛
大伴百代 0823

「散(ち)らくは何方(いづ)く」,此云花散之處在何方。
「然(しか)すがに」,雖述如此,然而實際上...
「此城山(このきのやま)に」,指大野山。用此字以大宰府可見該山,而指稱之。
此歌否定前曲所述,按序文時節,蓋不能見落梅。故全卅二首除本曲外雖多詠落梅,或許實則為文學上之虛構。

0824 【承前,卅二之十。】
 烏梅乃波奈 知良麻久怨之美 和我曾乃乃 多氣乃波也之爾 于具比須奈久母 【少監阿氏奧嶋。】
 梅花(うめのはな) 散(ち)らまく惜(をし)み 我(わ)が園(その)の 竹林(たけのはやし)に 鶯鳴(うぐひすな)くも 【少監阿氏奧嶋(せうけんあじのおきしま)。】
 梅花咲而落 蓋是惜此梅早謝 吾宿庭園間 竹林之中鶯發鳴 啼泣惋惜音不斷
安倍奧嶋 0824

「我(わ)が園(その)の」,此句當指作者自宅之園,而非旅人之苑。
「鶯鳴(うぐひすな)くも」,『古今集』中蟲鳥啼鳴,多有影射人類涕泣之訴。『萬葉集』中此歌亦為類例。原文「怨之美(惜しみ)」字亦含歎恨花謝之情。

0825 【承前,卅二十一。】
 烏梅能波奈 佐岐多流曾能能 阿遠夜疑遠 加豆良爾志都都 阿素毗久良佐奈 【少監土氏百村。】
 梅花(うめのはな) 咲(さ)きたる園(その)の 青柳(あをやぎ)を 蘰(かづら)にしつつ 遊暮(あそびく)らさな 【少監土氏百村(せうけんとじのももむら)。】
 梅花味清雅 盛咲一面此庭間 手折青柳枝 編織為縵作遊樂 盡歡終日此園中
土師百村 0825

「蘰(かづら)にしつつ」,本句つつ有數人一同施行相同動作之意。
「遊暮(あそびく)らさな」,遊ぶ亦有飲宴之意。

0826 【承前,卅二十二。】
 有知奈毗久 波流能也奈宜等 和我夜度能 烏梅能波奈等遠 伊可爾可和可武 【大典史氏大原。】
 打靡(うちなび)く 春柳(はるのやなぎ)と 我(わ)が宿(やど)の 梅花(うめのはな)とを 如何(いか)にか分(わか)む 【大典史氏大原(だいてんしじのおほはら)。】
 搖曳隨風動 擺盪春柳無限好 其與吾庭間 如雪暗香白梅花 如何分別孰優哉
史大原 0826

「打靡(うちなび)く」,春之枕詞。每逢春至,草木伸展,隨風飄盪,故此。
「如何(いか)にか分(わか)む」,分在此有識別、判斷優劣之意。

0827 【承前,卅二十三。】
 波流佐禮婆 許奴禮我久利弖 宇具比須曾 奈岐弖伊奴奈流 烏梅我志豆延爾 【小典山氏若麻呂。】
 春去(はるさ)れば 木末隱(こぬれがく)りて 鶯(うぐひす)そ 鳴(な)きて去(い)ぬなる 梅(うめ)が下枝(しづえ)に 【小典山氏若麻呂(せうてんさんじのわかまろ)。】
 每逢新春至 隱於木末樹梢之 鶲鳥樹鶯兮 發鳴啼春更飛去 移行下枝迎春暖
山口若麻呂 0827

「木末(こぬれ)」,「木末(このぬれ)」之略。末(ぬれ)乃事物之先端,梢。
「鳴(な)きて去(い)ぬなる」,なる表推定傳聞。

0828 【承前,卅二十四。】
 比等期等爾 乎理加射之都都 阿蘇倍等母 伊夜米豆良之岐 烏梅能波奈加母 【大判事丹氏麻呂。】
 人每(ひとごと)に 折餝(をりかざ)しつつ 遊(あそ)べども 彌珍(いやめづら)しき 梅花(うめのはな)かも 【大判事丹氏麻呂(だいはんじたんじのまろ)。】
 人每折其枝 插頭近首髻以為餝 如此宴遊樂 然見彼花不厭飽 彌珍愛之梅花矣
丹治比 0828

「彌珍(いやめづら)しき」,更令人憐。「珍(めづら)し」有可愛之意。

0829 【承前,卅二十五。】
 烏梅能波奈 佐企弖知理奈波 佐久良婆那 都伎弖佐久倍久 奈利爾弖阿良受也 【藥師張氏福子。】
 梅花(うめのはな) 咲(さ)きて散(ち)りなば 櫻花(さくらばな) 繼(つ)ぎて咲(さ)くべく 成(な)りにて非(あら)ず哉(や) 【藥師張氏福子(くすりしちゃうじのふくし)。】
 梅花咲清雅 花開花落雖可惜 然見櫻含苞 將繼梅謝再綻放 再添花色報春音
張福子 0829

「繼(つ)ぎて咲(さ)くべく 成(な)りにて非(あら)ず哉(や)」,落梅雖令人惜,然櫻已含苞待放,將繼之滿開。
「藥師」,醫師之和風表記。

0830 【承前,卅二十六。】
 萬世爾 得之波岐布得母 烏梅能波奈 多由流己等奈久 佐吉和多留倍子 【筑前介佐氏子首。】
 萬代(よろづよ)に 年(とし)は來經(きふ)とも 梅花(うめのはな) 絕(た)ゆる事無(ことな)く 咲渡(さきわた)るべし 【筑前介佐氏子首(ちくぜんのすけさじのこびと)。】
 縱令千萬代 年歲流逝不復返 然此梅花者 年年常盛無絕時 咲度古今亙永久
佐伯子首 0830

「來經(きふ)」,年月流逝,日積月累之意。

0831 【承前,卅二十七。】
 波流奈例婆 宇倍母佐枳多流 烏梅能波奈 岐美乎於母布得 用伊母禰奈久爾 【壹岐守板氏安麻呂。】
 春(はる)なれば 宜(うべ)も咲(さ)きたる 梅花(うめのはな) 君(きみ)を思(おも)ふと 夜眠(よい)も寢無(ねな)くに 【壹岐守板氏安麻呂(いきのかみはんじのやすまろ)。】
 每逢新春臨 理宜綻放咲盎然 清雅梅花矣 吾每念君心浮動 夜間輾轉甚難眠
板持安麻呂 0831

「宜(うべ)」,道理如此。表以下所言為當然。
「君(きみ)を思(おも)ふと」,只要想到梅花。此以君字表梅花之擬人。

0832 【承前,卅二十八。】
 烏梅能波奈 乎利弖加射世留 母呂比得波 家布能阿比太波 多努斯久阿流倍斯 【神司荒氏稻布。】
 梅花(うめのはな) 折(を)りて髮插(かざ)せる 諸人(もろひと)は 今日間(けふのあひだ)は 樂(たの)しくあるべし 【神司荒氏稻布(かむづかさくわうじのいなしき)。】
 舉手執梅花 折枝插髮以髻首 諸人今日間 遊樂盡飲渡終日 歡愉快活似無憂
荒木稻布 0832

「樂(たの)しくあるべし」,「あるべし」於此乃「看似...之狀」之意。
「神司」,大宰府主神之和風表記。荒氏蓋荒木、荒田井、荒井之略。

0833 【承前,卅二十九。】
 得志能波爾 波流能伎多良婆 可久斯己曾 烏梅乎加射之弖 多努志久能麻米 【大令史野氏宿奈麻呂。】
 每年(としのは)に 春來(はるのきた)らば 如是(かく)しこそ 梅(うめ)を髮插(かざ)して 樂(たの)しく飲(の)まめ 【大令史野氏宿奈麻呂(だいりょうしやしのすくなまろ)。】
 每年逢春來 如是折梅以插頭 梅枝髻首而 歡飲盡宴以迎春 萬象復始歲更新
小野宿奈麻呂 0833

「每年(としのは)に」,年之端,而『萬葉集』4168腳注云:「每年,之をとしのはと云ふ。」

0834 【承前,卅二二十。】
 烏梅能波奈 伊麻佐加利奈利 毛毛等利能 己惠能古保志枳 波流岐多流良斯 【小令史田氏肥人。】
 梅花(うめのはな) 今盛(いまさか)り也(なり) 百鳥(ももとり)の 聲戀(こゑのこ)ほしき 春來(はるきた)るらし 【小令史田氏肥人(せうりゃうしでんじのこまひと)。】
 清雅梅花開 暗香浮動今盛也 吾待時已久 百鳥爭鳴令人眷 鳥語聲囀春來矣 
田口肥人 0834

「聲戀(こゑのこ)ほしき」,「戀(こ)ほし」蓋「戀(こ)ひし」之古形。『古事記』下有「衷戀(うらこ)ほしけむ」云云。東國語「こふし」「くふし」或為其訛音形。

0835 【承前,卅二廿一。】
 波流佐良婆 阿波武等母比之 烏梅能波奈 家布能阿素毗爾 阿比美都流可母 【藥師高氏義通。】
 春去(はるさ)らば 逢(あ)はむと思(も)ひし 梅花(うめのはな) 今日(けふ)の遊(あそび)に 相見(あひみ)つるかも 【藥師高氏義通(くすりしかうじのよしみち)。】
 吾思待春至 當得久離後相逢 清雅梅花矣 今日遊興飲宴上 蓋得有幸相見哉
高丘義通 0835

「逢(あ)はむと思(も)ひし」,以逢字比欲賞梅之擬人手法。

0836 【承前,卅二廿二。】
 烏梅能波奈 多乎利加射志弖 阿蘇倍等母 阿岐太良奴比波 家布爾志阿利家利 【陰陽師礒氏法麻呂。】
 梅花(うめのはな) 手折髮插(たをりかざ)して 遊(あそ)べども 飽足(あきだ)らぬ日(ひ)は 今日(けふ)にしありけり 【陰陽師礒氏法麻呂(おんやうじきののりまろ)。】
 梅花咲一面 手折梅枝而髻首 遊宴盡歡飲 終日嬉戲不飽足 其日正為今日矣
磯部法麻呂 0836

「飽足(あ)きだらぬ」,不覺飽足、厭煩。按天草本平家物語』、日葡辭書,「飽足(あきだ)る」皆採連濁之音。

0837 【承前,卅二廿三。】
 波流能努爾 奈久夜汙隅比須 奈都氣牟得 和何弊能曾能爾 汙米何波奈佐久 【笇師志氏大道。】
 春野(はるのの)に 鳴(な)くや鶯(うぐひす) 懷(なつ)けむと 我(わ)が家園(へのその)に 梅(うめ)が花咲(はなさ)く 【筭師志氏大道(さんししじのおほみち)。】
 新䖝春野間 鶯鳥詠春發啼鳴 欲與鶯相睦 吾家庭園梅花咲 一面綻開待鶯至
志紀大道 0837

「鳴(な)くや鶯(うぐひす)」,や乃間投助詞。
「懷(なつ)けむと」,懷(なつ)く表不令對象遠離,與之親睦之意。
「梅(うめ)が花(はな)」,が與の同,而熟合度勝於の。『古事記』等更常用が字。『萬葉集』依場合亦有可用の而刻意用が之例。

0838 【承前,卅二廿四。】
 烏梅能波奈 知利麻我比多流 乎加肥爾波 宇具比須奈久母 波流加多麻氣弖 【大隅目榎氏鉢麻呂。】
 梅花(うめのはな) 散紛(ちりまが)ひたる 岡邊(をかび)には 鶯鳴(うぐひすな)くも 春片設(はるかたま)けて 【大隅目榎氏鉢麻呂(おほすみのさくわんかじのはちまろ)。】
 梅花開而謝 零落舞散降紛紛 於彼岡邊者 鶯鳥徘徊發啼鳴 是知時節春至矣
榎井鉢麻呂 0838

「岡邊(をかび)には」,び乃邊之意,用法同於神奈備(かむなび)山之備字。
「春片設(はるかたま)けて」,「片設(かたま)く」表某時期之到來。

0839 【承前,卅二廿五。】
 波流能努爾 紀理多知和多利 布流由岐得 比得能美流麻提 烏梅能波奈知流 【筑前目田氏真上。】
 春野(はるのの)に 霧立渡(きりたちわた)り 降雪(ふるゆき)と 人(ひと)の見(み)る迄(まで) 梅花散(うめのはなち)る 【筑前目田氏真上(ちくぜんのさくわんでんじのまかみ)。】
 新䖝春野間 猶似霧湧白一面 人目見之者 疑為皓雪降紛紛 寔是梅花散吹雪
田中真上 0839

「春野(はるのの)に 霧立渡(きりたちわた)り」此句有修飾第三句「降雪(ふるゆき)と」之說,亦有修飾第五句「梅花散(うめのはなち)る」之說,未詳孰是。

0840 【承前,卅二廿六。】
 波流楊那宜 可豆良爾乎利志 烏梅能波奈 多禮可有可倍志 佐加豆岐能倍爾 【壹岐目村氏彼方。】
 春柳(はるやなぎ) 縵(かづら)に折(を)りし 梅花(うめのはな) 誰(たれ)か浮(うか)べし 酒坏上(さかづきのへ)に 【壹岐目村氏彼方(いきのさくわんそんじのをちかた)。】
 春柳現新䖝 手折枝芽以為蔓 梅花飄暗香 是其梅兮抑或柳 孰浮酩醴酒盃上
村君彼方 0840

「春柳(はるやなぎ) 縵(かづら)に折(を)りし」,此句難解。或云「春柳」乃「縵」之枕詞無義,而以梅為蔓。或云誰(たれ)か實為句首而以倒裝表尼醉之破格。或云青柳若芽折以為縵,與梅花並立。

0841 【承前,卅二廿七。】
 于遇比須能 於登企久奈倍爾 烏梅能波奈 和企弊能曾能爾 佐伎弖知流美由 【對馬目高氏老。】
 鶯(うぐひす)の 音聞(おとき)くなへに 梅花(うめのはな) 我家園(わぎへのその)に 咲(さ)きて散(ち)る見(み)ゆ 【對馬目高氏老(つしまのさくわんかうじのおゆ)。】
 鶯鳴報初春 聞其音訊不覺間 清雅梅之花 在吾家苑庭園中 既已花開復花落
高丘老 0841

「鶯(うぐひす)の 音聞(おとき)くなへに」,「音(おと)」乃音訊之意。俗以鶯為春使,鶯啼乃報春之至。「なへに」意同「するに」、「つれて」。

0842 【承前,卅二廿八。】
 和我夜度能 烏梅能之豆延爾 阿蘇毗都都 宇具比須奈久毛 知良麻久乎之美 【薩摩目高氏海人。】
 我(わ)が宿(やど)の 梅下枝(うめのしづえ)に 遊(あそ)びつつ 鶯鳴(うぐひすな)くも 散(ち)らまく惜(を)しみ 【薩摩目高氏海人(さつまのさくわんかうじのあま)。】
 吾宿庭園間 梅之下枝鶯穿梭 遊興更爭鳴 蓋是惜花不欲散 不佇上枝遊下枝
高丘海人 0842

「我(わ)が宿(やど)の」,梅花歌卅二首中,數首不似旅人邸之風情。或旅人去信命以園中梅為題詠詩,而各詠己庭。
「梅下枝(うめのしづえ)」,「下枝(しづえ)」相對於「上枝(ほつえ)」「中枝(なかつえ)」而言。作者擬鶯鳥之情,言其惜花落而不遊於上枝。

0843 【承前,卅二廿九。】
 宇梅能波奈 乎理加射之都都 毛呂比登能 阿蘇夫遠美禮婆 彌夜古之敘毛布 【土師氏御道。】
 梅花(うめのはな) 折髮插(をりかざ)しつつ 諸人(もろひと)の 遊(あそ)ぶを見(み)れば 都(みやこ)しぞ思(も)ふ 【土師氏御道(はにしうぢのみみち)。】
 今見彼諸人 手折梅花插髻首 以為遊樂者 觀此盛況有所思 心憶昔日在都時
土師御道 0843

「都(みやこ)しぞ思(も)ふ」,『萬葉集』多採「し思ほゆ」等以ゆ為自發助動詞所表之內容,中古歌則以「をしぞ思ふ」表示。本歌為其先例。

0844 【承前,卅二二十。】
 伊母我陛邇 由岐可母不流登 彌流麻提爾 許許陀母麻我不 烏梅能波奈可毛 【小野氏國堅。】
 妹(いも)が家(へ)に 雪(ゆき)かも降(ふ)ると 見(み)る迄(まで)に 幾許(ここだ)も紛(まが)ふ 梅花(うめのはな)かも 【小野氏國堅(をのうぢのくにかた)。】
 吾妹邸之中 猶似皓雪零一片 人目見之者 幾許紛亂令人惑 寔是舞落梅花矣
小野國堅 0844

「妹(いも)が家(へ)に」,「妹(いも)が家(いへ)」之略,此歌詠戀人之家,與他曲詠己庭有異。
「幾許(ここだ)も紛(まが)ふ」,梅花之落擬可亂真,甚令人錯亂勿以為雪。

0845 【承前,卅二卅一。】
 宇具比須能 麻知迦弖爾勢斯 宇米我波奈 知良須阿利許曾 意母布故我多米 【筑前拯門氏石足。】
 鶯(うぐひす)の 待難(まちかて)にせし 梅(うめ)が花(はな) 散(ち)らず在(あり)こそ 思兒(おもふこ)が為(ため) 【筑前拯門氏石足(ちくぜんのじょうもんじのいそたり)。】
 吾知鶯難待 欲聞黃鶯報春音 清雅梅花矣 但願為吾所慕人 切莫早謝仍常咲
門部石足 0845

「待難(まちかて)にせし」,此乃比喻梅花難待黃鶯報春而欲早謝之擬人用法。
「散(ち)らず在(あり)こそ」,こそ表希求。
「思兒(おもふこ)が為(ため)」,為了戀人。詠作者個人之心境。

0846 【承前,卅二卅二。】
 可須美多都 那我岐波流卑乎 可謝勢例杼 伊野那都可子岐 烏梅能波那可毛 【小野氏淡理。】
 霞立(かすみた)つ 長(なが)き春日(はるひ)を 髮插(かざ)せれど 彌懷(いやなつ)かしき 梅花(うめのはな)かも 【小野氏淡理(うのうぢのたもり)。】
 春霞雲湧立 日久時長春日間 雖折枝髻首 彌另人懷更愛萬 暗香清雅梅花哉
小野田守 0846

「彌懷(いやなつ)かしき」,「懷(なつ)かし」表心靈受其吸引而難分難捨之狀。